The Sting of Nightmares

真野魚尾

ハチの悪夢

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 いえ、9回では足りないかもしれません。少なくとも私が二十代の頃から、何度も見ている夢があります。



 ハチに刺される夢。

 ハチと言っても、ミツバチのような小さなものではなく、スズメバチみたいに大きなタイプです。


 奴らは一匹ずつ私のもとへやって来ます。集団ではないのが、不幸中の幸いかもしれません。


 出会い頭に腕や手の甲を刺されるのを、私は毎回歯を食いしばりながら素手で引き抜いて、そのまま握り潰したり、地面に叩きつけたりするのです。ワイルドですよね。現実ではとてもこんな勇ましい行動は取れません。


 ともあれ、その一連の感触が妙に生々しくて、目が覚めた後も覚えているのです。


 こんな恐ろしい体験、9回どころか、8回も味わえば充分だと思います。

 ハチだけに。



 …………。



 それはそうと、何度も似たような夢を見る心理状態というのは気になります。

 そこで今回、「ハチに刺される夢」が意味するところを、夢占いで調べてみました。


 ネットをざっと見渡した限りでは、おおむね「トラブルの前兆」や「人間関係での不安」を暗示しているのだそうです。


 バーナム効果と言ってしまうと身も蓋もないのですが、心当たりはあります。

 仕事上でのストレスです。ハチの夢を見るようになった時期とも重なりますし、夢判断の真偽はともかくとして、腑には落ちました。



 私はメンタルが弱いほうだという自覚があります。仕事でのミスや、対人関係の些細なことでへこみがちです。午前中にやらかすと、その日一日引きずります。


 でも、一晩寝て起きると、大概のことは忘れているのですよね。子どもの頃から私に備わっている、便利な機能です。単純な精神構造ともいいます。


 夢は脳をリセットする働きがあるともいいますし、もし日中のストレスがハチの悪夢のおかげで解消されているのなら、案外いい取り引きなのかもしれません。



 ところで、ハチの天敵といえば、害虫除けの模型で知られるオニヤンマや、カマキリ、クモなどがいるそうです。


 動物ではクマ、それから鳥類にもハチをエサとする種類がいるのだとか。私たちにはあまりなじみのないハチクマという猛禽類のほか、ツバメやスズメ、ニワトリもスズメバチを食べるというのは意外でした。


 もし次にハチの夢を見ることがあったなら、刺される前にこれらトリの降臨を期待するといたしましょう。

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