第2話 雪の中においてきたもの

 うさぎとおおねずみは、雪をはらって、あたたまることにしました。うさぎは、ひんやりとしたりんごをそっとそばの雪にうずめて、みまもることにしました。

 「おおねずみくん」

 「うん?」

 「ぼくら、これからどうしようか」

 「まず、あたたまる。それから、かんがえるんだ。これは、だれのりんごなのか」

 うさぎとおおねずみは、毛布をもってきて、あたたまりながら、はなしあうことにしました。

 「りんごをみつけたのは、どこだったんだい?」

 「森のはずれのほうで、りすくんちのちかくだったよ」

 「りすくんには会ったのかい?」

 「ううん、会ってないよ。ねむっていたみたいだったからめずらしくつかれてるのかなと思って」

 「りすくんは、ねむっているのか」

 おおねずみは、雪をみつめて、いいました。おおねずみは、すこしかんがえて、うさぎにいいました。

 「こうしていると、去年の冬のことを思い出さないかい?」

 おおねずみは、ほんのすこしのにんじんの葉っぱをとってきて、うさぎにわけてくれました。うさぎは、にんじんの葉っぱをみるなり、飛び跳ねそうになりました。とってもうれしかったのです。

 「うさぎくんは、ほんとうに、にんじんの葉が好きなんだな」

 おおねずみも、よろこぶうさぎにつられて、うれしそうでした。うさぎは、にんじんの葉を大事そうに食べました。

 「去年も、おおねずみくんにこれをもらったなぁ、あれは、とってもうれしかったんだ!りすくんも、よくぼくにくれたんだ!りすくんは……」

  うさぎは、そこまで話してだまってしまいました。それから、おおねずみのほうと雪にうずめたりんごをみつめて、はっとしたようです。うさぎくんは、どうやらなにかを思い出したようだとおおねずみは、思いました。

「おおねずみくん、りすくんのおうちにいこう!まえにうえたにんじんがそだってると思うんだ!」

おおねずみくんは、めをぱちくりさせました。

「にんじん?」

おおねずみはびっくりして、そうききかえしました。おおねずみは、うさぎがりんごのことをかんがえているんだと思っていたのです。

「にんじん!」

おやおや、どうやら、うさぎはにんじんであたまがいっぱいのようです。

おおねずみは、もういちどうさぎにたずねることにしました。

「うさぎくん、このりんごはどうするんだい?」

「もっていくよ!もともとりすくんのおうちからきたんだ、もどればなにかわかるかも…それにね、今日はとってもとってもさむい日だもの、動かずにいるなんて、ぼくにはできないんだ」

…つづく

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夢をみていたいね ひととせ @fugasi617

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