魔法少女ウィステリアと妖精ポペポンのウルトラエクストリームパワー!

北 流亡

魔法少女ウィステリア 第5話 マジヤバ!捨て身のダリアンヌ!

 中野藤花とうかの持った紫のロッドは、振り上げた所で止まった。

 一振りすれば魔法少女に変身出来る道具。藤花は、振り下ろさない。額に、じわりと汗が滲んでいた。


「藤花なにしてるポペ! はやく変身するポペ! 敵がすぐそこにいるポペ!」


 妖精ポペポンが藤花を急かす。

 テーマパークを、群衆が逃げ惑っていた。

 無理もない。藤花はポペポンの方を見て、そう思った。日常にが闖入して、冷静でいられる者は少ない。


「……私が戦わないとダメ?」

「いまさら何を言ってるポペ! 闇の魔法界の黒魔女と戦えるのは藤花、いや魔法少女ウィステリア! 君だけポペ!」


 藤花は息を吐いた。やるしかない。早く動かないと、怪物は何をしてくるかわからない。

 一拍置いて、杖を振り下ろす。紫の光の奔流が、藤花を包み込む。藤花の着ているブレザーが、紫色のフリルドレスへと変化していく。


「咲き乱れる慈愛の光! ウィステリア!」


 とりあえずポーズは決めた。ポーズとセリフは、破ることの許されないルールだ。


 誰も、ウィステリアの方は見ていなかった。皆、逃げることに必死だ。

 藤花も逃げ出したかった。魔法少女になってから4週間、ずっと逃げたいと思っていた。


「さあ、そこにいる黒魔女ダリアンナと戦うポペ!」


 黒魔女は、ずっとウィステリアの目の前にいた。腰を抜かして、立てないでいた。身体は震え、顔から出せる液体を全部出していた。


「お願いします……なんでもしますから殺さないでください……」


 黒魔女は、闇の魔法界におけるエリートだと、ポペポンから聞いていた。しかし、今まで遭遇した5人は、全員こんな調子だ。


「じゃあ、お前の着ている衣服ローブロッド、それから黒水晶アビスストーンをよこせポペ」

「は、は、はいいい! 今すぐに!」


 言うが早いか、黒魔女ダリアンヌはあっという間に全裸になって平伏し、要求した物を全て差し出した。


「物分かりがよくて助かるポペ。もう行っていいポペよ」

「ひいいいいいいい!」


 ダリアンヌはあられも無い姿のまま、弾けるように逃げた。


「今日も平和は守られたポペ〜」


 ポペポンは、5メートルの身体についた12本の脚と、10本の腕を震わせて喜びを表現した。

 その縦に並んだ3つの顔面は、いずれも満面の笑みを浮かべていた。

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