晴れて闇落ちしました!
無頼 チャイ
輝かしい闇落ち秘話
目が覚めたら、僕は魔族に看病されていた。谷底で横になっていたらしい。
どうも、勇者と魔王の激戦に巻き込まれ、いつの間にかそんな所へ落ちていったそうだ。
谷底は暗く、人はいない。魔王軍側が同胞を探す最中、ついでのように僕のような子供を拾って、食事などの面倒を見てくれた。
でも、言われて確かに、谷底に落ちる際、視界が暗くなっていった気がする。僕は戦時から離れようと仲間と遠くへ向かっていたけど、突然魔王が現れ、続くように勇者も現れた。戦いは当然のように始まり、剣戟や魔法の衝突によって、僕らは留まりきれず吹き飛ばされた。
その後はぼんやりしているけど、魔物の人曰く、勇者は自分達が戦えば周りがどうなるか知っていた。つまり、見殺しにするつもりだったと。
僕は、それを聞いて、奥歯を噛み締めた。
「つまり、正式に闇落ちしたんですね! 僕!」
「は?」
面倒をみてくれていた髪が蛇の人が首を傾げた。
「僕! 闇落ちヒーローにあこがれてたんです! あのキラキラとは全然違う、ギラギラしてるところに!」
「そこは子供らしい理由ね」
「闇に落ちたのなら、僕、念願のダークヒーロー! 晴れて闇落ち戦士何ですね!」
「闇に落ちたから闇落ちなんだけど、物理的にじゃないわよ。てか晴れるな!」
こうして、僕は精進するために木刀を手に持ち、毎日素振三昧だった。
すぐに病室に返されたけど。
一人で戦うのが闇落ち戦士、だから近くの森に入っては、猪何かに勝負を仕掛けて場数を踏み続けた。
口から炎吐かれて毎回ビビって逃げたけど。
あと、闇落ち戦士といえば、基本力を求めて旅をするイメージだから、同じく目的を探した。
相談したらプロテインがそうだと言われ飲んだから、新しい力を求めないと。
そんなこんなで立派な闇落ち戦士になるため、努力しひたすら前向きに打ち込んだ。
ある日。
「離しやがれ! オレはあの勇者を倒してやるんだァ!」
「安静にしなさい! 傷が開きますよ!」
ミノタウロスの人が暴れて、看護婦さんを困らせていた。
ミノタウロスの人は、砂漠のダンジョンでボスを任されてたらしいんだけど、ついこの間勇者に倒されちゃって、ここに来たらしい。
だから、早くリベンジしたくて出ようとしてる。でも、看護婦さんを困らせるのは良くない。
だから――。
「やいミノタウロス! の人。暴れるんじゃない!」
「何だガキッ! ん? 見れば人間じゃねえか。なんで人間が魔物と一緒にいやがる! 気持ち悪いんだよ」
「なんで僕が魔物と一緒にいるか、って聞いたね、答えてあげるよ。それは……闇落ちしたからさ!」
「だからなんだ!」
「いずれ魔物にも師匠が出来て、いずれ地獄の稲妻的なのを教わる予定なんだ! だからよろしくお願いします!」
「弟子は取らねぇ主義だし人間はなおさら無理だ、ってかサラッと弟子入りしようとするなクソガキッ!」
「強くなりたいんです!」
僕は大きな声を出した。
「強くなって、いずれ勇者と戦うんだ」
「ほう、なぜ人間のお前が勇者と戦うんだ」
「僕がここに来た理由は勇者が関係してるんだ」
「ほう」
僕は、看護婦であるメデューサさんに聞かされた話しを、可能な限り思い出し、話した。
「勇者と魔王が戦闘した時の余波で吹き飛ばされて、谷底深くに落されたんだ。魔王はもちろん、勇者も自分の力をちゃんと知っていた。だから、周りがどうなるのか分かってたんだって。だから、勇者にお礼参りがしたいんだ」
「ほう、貴様のようなガキまで被害が及んでいるのか、人間である貴様は憎いが、その、仕返ししたい気持ちだけは共感してやるぞ。小僧」
「え? いや闇落ちさせて頂きありがとうございますって成長した僕の強さで恩返しするんだけど」
「本当のお礼参りじゃねえか! 内容が師弟のそれだし! もういい、貴様のような小僧と話してると頭がおかしくなる! 潰れろクソガキィ!」
構えた。ミノタウロスの人は直進で突進してくる。猪を相手にしていたから分かる。全力疾走の真っすぐな攻撃は軌道が読みやすい上に避けるのは簡単だ。横に転がれば無事に済むだろう。
でも、僕は逃げなかった。
木刀を手に持ち、逆手に持つ。
正面から激突したって、力負けしたら意味がない。でも、相手の突進する力を利用すれば、逃げながらに大ダメージを与えられるはず。
逆手に持った木刀の刀身をしっかり相手に向けて、その時を待った。
「僕はダークヒーロー! こんなところで負けない!」
「くたばれぇ!」
突進と、木刀が交わる瞬間。
「あなた達静かにしなさいッ!」
「「あばばばッ!!」」
メデューサの看護婦さんによって石にされちゃった。
その後戻され、きつく怒られた。
僕の闇落ち物語の序章は、まず怪我を治してからになりそうだった。
晴れて闇落ちしました! 無頼 チャイ @186412274710
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