魚

第1話

「魚を残すと、魚の罰が当たるぞ。」

幼い頃、父にそう叱られた記憶がある。

皿の上に残った焼き魚の骨。口の中に広がる生臭さが嫌で、僕は箸を置いた。

父は険しい顔で僕を睨みつけたが、母が間に入り、その場は収まった。

それから二十年。僕は漁師になった。

父が他界し、家業を継ぐ形で船を出すようになった。

潮風とともに生きる日々。

海を知り、魚の習性を学び、網を仕掛ける技術を磨いた。

そして、ある日──

信じられないほどの大漁だった。

網を引き上げるたびに、魚が跳ねた。

銀色の魚体が朝日にきらめき、まるで海が財宝を惜しみなく与えてくれているかのようだった。

船の上には山のように魚が積まれ、仲間たちと歓声を上げた。

「今日は呑むぞ！」

皆が笑った。だが、その時、ふと異様な感覚が襲った。

魚の目がこちらを見ている──

無数の魚の瞳が、まるで僕を責めるように。

ゾクリとした寒気が背筋を這い上がる。

疲れか、それともただの錯覚か。

僕は頭を振り、気を取り直して操縦桿を握った。

しかし、船は港に戻ることができなかった。

──夜が訪れる頃、海が急に荒れ始めた。

空が黒く染まり、突風が吹きつける。

波がうねり、船を大きく揺さぶった。

「おい、エンジンが止まったぞ！」

仲間の叫び声。

エンジンを調べようとした瞬間、足元が揺らぎ、僕は船の甲板に転がった。

その時、聞こえた。

ざわざわと何かが蠢く音。

見ると、船に積まれた魚が動いていた。

いや、「蠢いていた」と言うべきか。

生きているはずのない魚が、ビチビチと暴れ始めたのだ。

「なんだこれ……！？」

その瞬間、何かが僕の足を掴んだ。

魚だ。

無数の魚が僕の足に絡みつき、ぬめる体で締め上げる。逃げようとしても、全身にまとわりついてくる。

「助けてくれ！」

だが、もう仲間の姿はどこにもなかった。

船は既に沈みかけていた。

暗い海の底から、無数の魚が現れ、僕を引きずり込もうとしている。

頭の中に、父の言葉がこだました。

「魚を残すと、魚の罰が当たるぞ。」

口が開く。

息が苦しい。

もがけばもがくほど、魚の群れが絡みつき、僕を沈めていく。

──最後に見えたのは、魚だった。

暗い海の底で、無数の魚の瞳が、にやりと笑ったように見えた。

この小説は、chatGPTにより作成されています。