漫才「一夜の過ちへの道」
愛田 猛
漫才「一夜の過ちへの道」
漫才「一夜の過ちへの道」
(「オクラホマミキサー」三味線版の出囃子)
二人「「ども=」」
「オクラホマ鈴木です~。」
「ミキサー佐藤です~。」
二人「「オクラホマミキサーズです~!」
オクラホマ(以下「オ」)「名前だけでも覚えてくださいね~。」
ミキサー(以下「ミ」)「こいつの顔だけでも覚えてくださいね~」
オ「特徴ある顔やから覚えてもらえますか。」
ミ「君、そんなオブラートにくるまんでもええやろ。」
オ「どういう意味や?」 」
ミ「このブサイクな顔、ひと目みたら忘れられへん。」
オ「そこまで言わんでもええやろ 」
ミ「ふた目と見られへん」
オ「ほっとけ。いまはそういうのルッキズムちゅーてダメやねんで。」
ミ「じゃあ、顔の不自由なオクラホマくん」
オ「それも昔からあるネタやね。 」
ミ「ええやん。何でも。」
オ「まあええわ。で、実は僕、前からあこがれてたものがあるねん。」
ミ「何や?」
オ「『一夜の過ち』ちゅーのにあこがれてんねん。 」
ミ「存在そのものが過ちみたいなもんやろ。」
オ「ほっとけ。そんでな。一度でいいから『一夜の過ち』というもんを経験して見たいねん。」」
ミ「…難しいやろね。 」
オ「何で?」
ミ「いや、絶対無理の間違いや。こういうことは正確に言おう。」
オ「そんなこと言わんでーな。例えば、バーで一人飲んでるとするやんか。」
ミ「ホッピー、『なか』追加で!」
オ「おしゃれなカクテルバーにはホッピーは無いで。」
ミ「♪ くるまにホッピー 」
オ「そんなん、今の若いひとはよう知らんよ。カクテルバーやから、たとえばマティーニや。」
ミ「ちょっとマッティーニ」 (待ってね)
オ「しょーもないな。バーのカウンタ―で飲んでるとするやん。」 」
ミ「まあ、ええわ。続けて。 」
オ「カウンターの逆はじに、綺麗な女が座ってる。」
ミ「昔綺麗だったかもしれない80のババアか? 」
オ「ちゃうわ。僕よりちょっと年上くらいの妖艶な雰囲気の、ええ女や。」 」
ミ「ほうほう。」 」
オ「一度やってみたいんや。バーテンに、カクテル頼んで、あっちの女性に出してもらうんや。『あちらのお客様からです。』言うてな。」 」
ミ「古典的やな。してその後は?」
オ「それから意気投合して、そのまま『一夜の過ち』を犯してしまうんや。うん、そこにしびれる、あこがれる~。」
ミ「まあ、まず無理やな。」
オ「そんなん、やってみなければわかれへん。なので、おとといやってみたんやが。」
ミ「お、やったんか。勇気あるな!」
オ「僕が、低い声で、『あそこの素敵な女性にブルーハワイを一杯』、ってバーテンに頼んだんや、
ミ「おお、なかなかええ声やな。」
オ「バーテンが、『あちらのお客様からです。』って、彼女に渡してくれてん。」
ミ「おお、そんでどうなってん?」
オ「そしたら、バーテンが、『あちらのお客様からです。』と言うて僕に渡してくれたわ。」
ミ「何を?」
オ「彼女の飲み代の請求書。そのまま、無言でいなくなってもたわ。」
ミ「きっついな~でも、君と『一夜の過ち』を犯したくなかったんやろ。
それもようわかるわ。」
オ「何でやねん? バーで一人で飲んでる女なんて、みんな男に誘われるのを待ってる、って。情報商材のマニュアルに書いてあったわ。」
ミ「情報商材! だいたいがネットで売ってる、ノウハウを書いた資料やな。なんぼや?」
オ「五万円。」
ミ「たっか~」
オ「タイトルは『一夜の過ちへの道』」
ミ「ベタやな~そんなの買うとったんかい。」
オ「早く、一夜の過ちを経験したい一心や。。」
ミ「正直、無理やと思うで。 」
オ「何でやねん。 」
ミ「実は、そういう資料には、だいたいちっさい字で但し書きが付いとるもんや。 」
オ「え?どんな?」
ミ「ただしイケメンに限る!」
オ「それ、ひどくない? でも、僕の買うたマニュアルは大丈夫やねん。」
ミ「 何でやねん。」
オ「ブサメンでも大丈夫なMパワー!って書いてあんねん。 」
ミ「Mパワー?何やそれ。」
オ「マネ―パワーや!お金があれば何でもできる! 」
ミ「猪木先生は元気があれば、ちゅーっとったがな。 」
オ「♪お金さえあれば~何でも手に入る~」
ミ「何ちゅう歌、歌っとんねん!」
オ「この曲、NHKの『プリンプリン物語』で敵の女幹部のヘドロが歌っててん。NHKやぞ!問題ない!タイトルは『世界お金持ちクラブの歌』や。」
ミ「…NHKさん、ようこんな歌流したなあ。」
オ「で、Mパワーをチャージしたんや。。」
ミ「どうやって?」
オ「そんなもん簡単や。はじめての何たら言うとこ行ったら、初めての客限定や、ちゅ0てキャンペーンで50万円、現金をMパワーチャージしてくれたわ。」
ミ「君、それ返さなあかんの知っとる?」
オ「え?そうなん?」
ミ「こういう男が、そのうち返せなくなって大阪湾に浮かぶんやで。」
オ「ようわからへんけど、僕は泳ぎが得意やから当然浮かぶで。大阪湾綺麗やないから、あまり泳ぎたくないけどな。」
ミ「そういうのと違うんやけどな。」
オ「で、そのマニュアルに書いてある店に行って、店長さんを呼んで、合言葉を言うたんや。」
ミ「合言葉?マニュアルに書いてあったんか?」
オ「ああそうや。『この店で一番女の子にモテるジャケットをくれ。』それが合言葉や。」
ミ「で、どうしたん?」
オ「店長が、ジャケットを出してくれてん。それがこの服や。」
ミ「ほお。で、なんぼや?」
オ「三十万円。」
ミ「たっか! 9800円のジャケットにしか見えへんで。」
オ「これで『一夜の過ち』が買えるなら安いやろ。」
ミ「そうやろか? 」
オ「店長がおまけで、赤と白のポケットチーフつけてくれてん。」
ミ「ポケットチーフ?」
オ「そう。これや、胸から出てる赤と白のハンカチや。」」
ミ「それかいな。売れないマジシャンの衣装か思ったわ。」
オ「実はな。これ『一夜の過ち歓迎』のサインやねん。」」
ミ「何やそれ。」
オ「マニュアルに書いてあってん。世の中には、一夜の過ちを求める女性たちがいて、その人たちが男を見分ける方法は、胸ポケットの紅白のポケットチーフと。」
ミ「ポケットチーフと?」
オ「左の脇のポケットからちらりと見える、封筒や。」
ミ「何やその封筒って。」
オ「Mパワーや。残りの二十万円を封筒に入れて、ポケットから少し見えるようにするねん。それが目印やってマニュアルに書いてあってな。」
ミ「何だか怪しくなってきたぞ。そんで?」
オ「お勧めのバーに行って、一人で飲んどったら、綺麗な女の人が近づいてきてん。」
ミ「おお、それでどうなった!」
オ「女の人が言うてん。『そのジャケット素敵ね。一杯奢らせて!』」」
ミ「おお、ジャケットの威力、凄いやん。」
オ「で、並んで飲んでてん。僕が右、彼女が左で、そのうち彼女がこてんと僕の肩に頭を乗せてきてん。」
ミ「おお、そんで?」
オ「『今夜は一夜の過ち。明日には忘れましょう。』言われてん。」
ミ「おお、凄いなあ。で、どないなった?」
オ「彼女がトイレに立って、僕は会計を済まして待っててな。
」
ミ「そんでどこへ連れてったんや?」
オ「それが、彼女が戻って来ーへんねん。」
ミ「え?まさか?> 」
オ「左のポケットの封筒も消えてしもうたんや。」
ミ「おい、それはやられたんちゃうか?」
オ「そんでな、彼女が席に忘れてる封筒があったんで、見てみたんや。」
ミ「おお、これを彼女が取りに戻るかもしれんし、連絡先がわかるかもしれんな。」
オ「書類が入ってたんや。」
ミ「おお、仕事関係か?大事なもんやから、取りに来るかもな。」
オ「表紙を見てびっくりしたわ。」
ミ「何て書いてあったん?」
オ「『一夜の過ち』を期待する男から金をゲットする方法。ちゅー情報商材やった。」」
ミ「全員ぐるかい!」
オ「さすがの僕も呆然としたわ。」
ミ「せやろな。」
オ「そしたら、バーテンさんが慰めてくれてん。」
ミ「優しいバーテンさんやな。何て?」
オ「災難やったな。忘れーや、こんなん、一夜の過ちや。」
ミ「おお!君、『一夜の過ち』達成したやん。おめでとう!」
オ「おめdとうじゃないわ! もうええわ。」
オ・ミ「ありがとうございました~オクラホマミキサーズでした~。」
(三味線のオクラホマミキサーの音楽で退場)
(完)
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いや~魔法のiらんどにはふさわしくないですかね~(笑)。
魔法さんには、内藤みかさんの作品とか、卑弥子という女性が出てくる作品とか、いろいろ読ませていただいたな~
ちなみに、「世界お金持ちクラブの歌」はYouTubeにあるので、聞きたい方は、この作品に★ををつけてから検索してくださいね!(笑)
以下の作品もよろしくお願いします。
アイドルはセフレ持ち:地味子がセフレを作りアイドルになった件
https://kakuyomu.jp/works/16818093092901668295
漫才「一夜の過ちへの道」 愛田 猛 @takaida1
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