死後の処理

白川津 中々

 親が死んだ。

 めんどくさいなぁと思い、とりあえず直葬でさっさと焼却してもらったのだがその後が煩わしかった。親戚やらなんやらが押し寄せ「人でなし」だの「バチアタリ」だのとのたまうのだ。


「何がそんなに気に食わないんだ」


 そう聞くと連中は更に顔をこわばらせ「気に食わないとかじゃない」と唾とばすのである。死者に対する哀悼の意だの坊主に金を払って経をあげてもらえだの。まったく、馬鹿馬鹿しい。死体を火にかけるだけで済む話。なのになぜ、死という事象を装飾しようとするのか。挙句、墓も立てろだと。五万の家賃で息切れしているような生活で死人の住居に気を回せるか。そこまで言うのであれば自分達が金を出して供養とやらをしてやればいいのだ。自分が生きていくうえで俺は精一杯。無駄な事に金を使いたくないし使えない。育ててもらった恩、血の繋がり、知った事か。そもそも親がそれを望んでいるのかどうかも不明である。もし死後の面倒をしてほしかったのであればそう教育をすべきだったのだ。そうしなかったのは、完全に親の落ち度だろう。


 そうしている間に、また親族からメッセージ。「安いプランがあるからこれにしなさい」だと。携帯電話の契約じゃないんだから!


「くだらねぇな」


 スマートフォンを投げ捨てて、ベッドに横になる。これだったら俺が死んだ方が幾らか楽だ。死後の処理というのはまったく、手に余る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死後の処理 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ