最終話

 ついに訪れた、謝恩会当日。

 今日は早起きして空港に向かって、謝恩会に行くんだ~!

 しかし、そんな大事な日に俺はというと……。


「ムグー! ムグー!」


 どうしたことか。喋ろうと思っても、まともに声が出ない。

 答は簡単。口にさるぐつわがつけられてるからだ。


 朝起きたらビックリ仰天。

 口が封じられているばかりか、布団でぐるぐる巻きのスマキにされていて、一切の身動きが取れなくなっているではないか。

 いったいどうしてこんなことに? 夜中に強盗でも入って、布団でぐるぐる巻きにされたのか?


 いいや違う。

 犯人は愚兄だよ 愚・兄!


「ムグー! ムグー!(なんのマネだオラァッ!)」

「はっはっは、何を言ってるかわからないなあ」


 人をスマキにしておいて、愚兄ときたら悪びれる様子もなく、のんきに笑っている。

 それどころか、なぜか俺が新調したスーツを勝手に着てるじゃないか。

 このバカ兄貴、いったい何を考えているんだー!?


「おっと、もうこんな時間だ。それじゃあ愚弟、お兄様は今から君に変わって、謝恩会に行ってくるよ」

「ムググー!?(なんだって!?)」


 バカな、招待された俺じゃなくて、兄が行くなんて。

 そんなことが許されると思っているのか!

 しかし愚兄ときたら。


「大丈夫、双子なんだからバレない!」


 ムカつくドヤ顔で言い放った!

 な、なんて無茶苦茶なやつなんだ!


 いや、だが確かに認めたくないが、俺と愚兄は顔だけはそっくり。

 謝恩会で担当さんや編集長と会っても、誤魔化せるかも?


「いや~作家の先生達と会えるなんて嬉しいな~。俺、今ほどお前と双子で良かったと思ったことないわ。それじゃ愚弟よ、お土産話を楽しみにしてるがよい。はっはっはー!」


 そう言って、本当に出ていきやがった!

 しかも俺は、布団に縛られたまま。

 おい、帰ってくるまで、俺はずっとこのままかよ!

 やっぱりあの愚兄、最低のクソ野郎だー!


 こうして愚兄は俺になりすまして、謝恩会に旅立って行ったのだった。

 帰ってくるまで、縛られた俺は無事でいられるだろうか?

 ちくしょう愚兄ー! 覚えてろよー!





 ※この物語はフィクションです。

 もう一度言います。この物語はフィクションです。

 筆者やその双子の兄とは、何の関係もありません。

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書籍化マウントを取り合う双子の兄弟の、仁義なき戦い! 無月弟(無月蒼) @mutukitukuyomi

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