王都へ、そして新たな陰謀

「……王都へ?」


蒼真は思わず聞き返した。


戦闘が終わり、ひとまず森の奥で休息を取った後、リュミエールは静かに提案した。


「はい。王都エルミラリアに向かうべきです」


「いやいやいや、待て待て! さっき、お前はその王都から逃げてきたんだろ? 追っ手がいるって言ってたじゃん!」


「だからこそ、戻らなくてはいけません」


リュミエールの瞳には、強い決意が宿っていた。


「私は王国の正当な後継者。私が逃げたままでは、ザイガスの思うがままです。ですが、もし私が戻り、真実を明らかにすれば――」


「待てよ……その証拠とか、あるのか?」


蒼真の問いに、リュミエールは沈黙した。


王国の現状について、ザイガスが権力を掌握し、リュミエールを反逆者に仕立て上げたのは明白だ。


だが、それを証明する確固たる証拠がなければ、王都に戻ったところで捕まるだけだろう。


「……証拠がなくても、私には王都で信頼できる者たちがいます」


リュミエールはそう言った。


「彼らの協力を得られれば、王都で真実を暴くことができるかもしれません」


「……なるほどな」


蒼真は腕を組んだ。


王都に行くこと自体、リスクが高すぎる。


だが、逃げ続けるだけでは状況は変わらないのも事実。


「シリウス、お前はどう思う?」


蒼真は、静かに剣を研いでいたシリウスを見た。


彼は微動だにせず、鋭い目を向ける。


「私は主君の命令に従うのみ。……それが王女の意思ならば、私はそれに従う」


「……そうかよ」


蒼真は頭を掻きながら、ため息をついた。


「結局、行くしかないってことか」


王都エルミラリアへ

翌朝、三人は王都エルミラリアへ向かって旅を始めた。


王都までは馬で数時間の距離。


しかし、街道を堂々と進めばすぐに見つかるため、森の中を抜けるルートを選んだ。


「リュミエール、お前が王都で頼れるって言ってた奴らって?」


「……まず、一人は ローゼン・グランツ 様。王国の第一騎士団長です」


「第一騎士団長……」


「彼は父の時代から忠誠を誓っていた騎士。もし、私の話を信じてくれれば、大きな助けになるでしょう」


「で、もう一人は?」


「……宰相ザイガスの側近の一人 クラウス・ルーデンベルク 」


「は?」


蒼真は思わず聞き返した。


「ザイガスの側近って……敵じゃないのか?」


「クラウス様はもともと私の父を支えていた賢者です。でも、ザイガスが政権を握ってからは、彼の側近として仕えるようになりました。ですが、私は信じています……彼は本当はザイガスの手の者ではなく、王国を守るために動いていると」


「……賭けみたいなもんだな」


蒼真は不安を拭えなかったが、他に頼れる者がいない以上、彼らに賭けるしかない。


王都の異変

王都エルミラリアが見えてきた。


遠くからでも分かるほど、荘厳な城壁がそびえ立ち、美しい白亜の城が中心に構えている。


しかし――


「……何か、異様に静かじゃないか?」


蒼真は違和感を覚えた。


王都の門前には、通常なら多くの商人や旅人が行き交っているはずなのに、今日は妙に閑散としている。


さらに、門の前には重装備の近衛兵たちが立ち並び、厳重な警備が敷かれていた。


「……嫌な予感がするな」


シリウスが警戒するように呟いた。


「こんなに厳しい警備は、普段の王都では見られないはずです……」


リュミエールも不安げに呟く。


「どうする? 正面突破は無理だぞ」


「いえ……裏口から潜入しましょう」


リュミエールは、城の裏にある秘密の通路の存在を説明した。


王族だけが知る抜け道であり、昔、父王と城を抜け出すときに使っていたという。


「……マジかよ、お前ほんとにお姫様だったんだな」


「当たり前です!」


リュミエールが少し怒ったように頬を膨らませる。


蒼真は思わず笑いそうになったが、すぐに表情を引き締めた。


「よし、じゃあその秘密の通路から潜入するか……!」


新たな陰謀

三人は秘密の通路を使い、王都の城内へと潜入する。


しかし――


「……おかしいな」


リュミエールが不安げに呟く。


「いつもなら、この通路には見張りの兵士がいるのですが……」


だが、誰もいない。


警備が厳重になっているはずなのに、なぜかこの通路はがら空きだった。


(まるで、俺たちがここから侵入するのを分かってたみたいじゃねぇか……)


嫌な予感がした。


その時――


ガコンッ!


突然、通路の奥の扉が閉じられた。


「しまった……罠だ!!」


蒼真が叫ぶ。


すると、壁の影から無数の黒装束の兵士たちが現れた。


「……待っていたぞ、王女殿下」


蒼真は、背筋が凍るのを感じた。


闇の中から現れたのは――


宰相ザイガス本人だった。


「ふむ……まさか自ら王都に戻ってくるとは、愚かだな」


ザイガスは不気味な笑みを浮かべる。


「さて、王女殿下。どう始末してやろうか……?」


「くっ……!」


リュミエールが剣を構える。


しかし、周囲にはすでに十数人の兵士たちが待ち構えていた。


「まずいな……」


蒼真は歯を食いしばる。


(どうする? どうすればこの状況を――)


その時――


「……さて、ここは私の出番か」


シリウスが剣を抜いた。


その瞳には、一切の迷いがなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

異世界の住人を召喚できるVRを手に入れた結果、現実がカオスになったんだが!? katura @karasu_7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ