引っ込み思案な私、だから気持ちを伝えられない。

久遠 れんり

だから私は

「もう、かなではおバカなんだから。望愛のあもそう思うでしょ」


 彼を馬鹿にして、ケタケタ笑うのは彩葉いろは

 奏の彼女。


 そして私は、彼女の友人ポジション。

 だけど本当は……


 大学一年の時に、一般教育が共通で一緒に授業を受けたが、実は専門が皆違う。

 私はデザイン学科、奏はシステム制御。

 彩葉は人文。


 そう彼女は、人文なのに深窓の令嬢からは、かけ離れた性格。

 ちょっとくせっ毛で、ショートヘヤー。

 パンツ姿で、ぺったんな靴を履いて走り回る。

 そう、イメージは運動部のお姉さん。


 私が告白したとき、ほんの数日、彼女が先に告白をした。

「そうなんだ」

 そうは答えたものの離れられず、だらだらと関係が続く。


 二年になってからは、各キャンパスが違い会うことは減ったが連絡は取っていたし、部屋に来ることもあった。

 一緒に来るから、いい加減腹が立っていたけれど。


 ぼちぼち諦めて、彼でも作ろうと思っていた頃、その機会が来た。というか、夜中に転がり込んできた。


「どうしたの? 一人?」

「ああ、一人。いや新歓でさ飲みに出ていたんだが、誰かが一年に酒を飲ませやがって、送って行ったりしたら電車が無くなった」

「そうなんだ、明日には返してもらえると良いわね」

 そう言うと、一瞬固まる。


「違う、そうじゃねえ。おまえは何時も突然だな」

「頭の体操よ、お水要る?」

「ああ、それと風呂貸して。きちんと返すから」

「はいはい」

 彼から匂う、お酒とたばこの匂い。

 誰か先輩が吸ったのね。


 彼のジャケットを預かり、におい消しのスプレーを吹きかける。

 きっと、何もしないより良いでしょ。

 そうしてハンガーに掛ける。


 でだ、家は独身用の2DK。

 そうは言っても、一部屋はベッドを入れると部屋が埋まり、もう一間をリビングに使っている。

 ダイニングは、一畳?

 そこに浴室のドアとトイレのドア。

 浴室側には、洗面所と洗濯機の置いてある前室があるのに、このバカはキッチンで脱いでやがった。


「どこで脱いでいるのよ、それにまだお湯ためてない」

「ああ、シャワーでいいから」

「良いからじゃ無い、そんな物見せるなぁ」

 彼は躊躇なく脱ぎ、なんかぷらぷらさせている。


「なんだよ、好きって言ったくせに」

 彼にそう言われて、思い出してしまった。

 封印していた記憶。


 彼は笑いながら、浴室へ入って行く。


 脱ぎ散らかした服を拾いながら、畳む。

 一応スプレーはした。


 何か着るもの。

 フリーサイズの短パンと、この時期にトレーナーはちょっとあれね。


 惜しいが、にゃんこな先生のTシャツをだす。

 バスタオルと共に、洗濯機の横に置く。


 もう一つ入りそうなシャツはあるが、大きく筆文字で職人と書かれたシャツはお気に入りで、普段使いにして結構くたびれている。

 製図するときには、あのシャツじゃ無いと駄目なのだ。


「うえぃ。さっぱりした」

 きちんと判ったようだが、短パンが短く、彼のトランクスのパンツが長い。

 

「似合うわよ」

 小さなにゃんこが三匹、彼の胸で踊っている。


「相変わらずアニメか」

「悪い?」

「いや、俺もみるし。なんか無いか?」

 頭にかぶったバスタオルをガシガシしながら聞いてくる。


「なに?」

「あるこほーる飲料」

「うーん。間違って買ったストロング缶を進呈しよう」

 渡すとじっと見て、一言。


「私を酔わせてどうするつもり?」

 何を言うかなこいつは……

「何もしないわよ」

「何だ、しないのか」

 なにそれ?


「何かあった? お姉さんに言ってみ?」

「同じ年だろが…… えっ、だぶったのお前?」

「だぶるかぁ。言っただけよ」

 グラスを出そうかと思ったのに、もう直接飲んでいるし。

 動く喉仏がおもしろい。


「何かつまみ要る?」

「いる」

 仕方が無い。朝食用の厚切りベーコンを喰わせよう。


 ついでに、ジャガイモスティックをレンチンして、塩胡椒とバターで炒めたり、だいこんの短冊を塩で揉んだり、スパゲッティをツナ缶であえてみたり、最後にもみ海苔や鰹節で味をごまかす。

 作って持っていったら、ストロングのお代わりを所望される。

「もう、まだ飲むの?」

「そう言うときもあるんだ」

 これは……


「また喧嘩?」

「そうだよ、聞いてくれ」

 話しが始まるが、座卓にあぐらをかいて座っている彼。

 トランクスの端から、何かが出てる。


「出てる」

 彼の視線が自分の足元に……


「んあっ……」

 ええ、襲われました。


 それから、何かある度に私を求めてくる。

「もう、いい加減別れたら?」

「別れてほしいのか?」

「言わない……」

 私たちは、親しい友人。

 ええ多分……

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引っ込み思案な私、だから気持ちを伝えられない。 久遠 れんり @recmiya

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