城塞都市レーヴェ

鳥のさえずりが聞こえ、俺は目を覚ます。今日もまた、一日が始まった。


あの戦いの後、俺は城塞都市レーヴェに訪れていた。理由は単純であの場所から一番近かったから。ま、二日近くはかかっているけどね。そういえば不思議だよな。はたからしたらマイヤーを殺したんだから、ルールから離れた方がいいと思うのが普通なのに俺はここにいる。それができるのは依頼を受けていない傭兵は傭兵法で保護されているかららしい。便利な機能だ。


とりあえず、着替えよう。いつものルーティンを淡々と済ませ、宿から外に出る。バルトと違ってルールの街なりは凄い絢爛豪華で物騒だ。屈強な建物が四方八方に建てられていて、行き交う人を見ると武装した兵士が列を成して行進している。これが日常なのだから驚きだ。よし、傭兵キャンプに行って3万ゴールドを貯めるんだ。そんな、志でルールの道に足を踏み入れた。




現在、俺はこの街の地図を片手に歩いているのだけど、この地図複雑すぎるだろ。文字が沢山ある。それに、ルール独特な書き方がさらに拍車をかけている。誰かに聞くか。聞きやすそうな人がいないか…あ、セシリア正教会の人達だ。聖職者なら親切だし聞きやすいな。それに、マリーナで慣れているし。


「あの、すみません」


その聖職者に近づき、一言かける。それにしても大きな体だな。マリーナが俺ぐらいの身長だったから凄いギャップが…あれ。


「え、なんでアンタがここにいるのよ」


「マリー…ナ?」


「お知り合いですかな?」


「ええ、まあ神父アレクサンダー。彼は前回の依頼で共闘したものです」


「なるほど、これも何かの巡り合わせ。私は神父アレクサンダー。よろしくお願いします」


「よ、よろしく」


で、でかいな。頭に生えた耳を見るに師匠と同じ獣人族とは思うけど、人の肌だ。そんなことよりも、顔の傷跡はなんだ。顔半分が跡になってる。年は中年ぐらいだろうか立派な髭を蓄えているなあ。


「イルといいますよろしくお願いします。お顔、どうかされたんですか?」


「おお、これはこれは怖がられてしまいましたな。私は十字軍に所属しているものでね。」


「そうなんですか…」


「ねぇ、イル」


「うん?」


「今時間ある?」


「いやまあ、昼までには傭兵キャンプに行きたいけど…」


「昼までならいいのね、神父アレクサンダー。昼頃まで彼と歩いてもいいかしら」


「ええ、いいですけど」


マリーナ?どうした腕なんか掴ん…ってうわー。


「急に走らないでよ」


「ごめん、ごめん。ちょっときて欲しいところがあるのよ」


「どこだよ」


「秘密」


マリーナに連れられて行き交う人なんて気にせず一心不乱に走り続けると。前に人が。


「マリーナ、人!」


「え、」


いてて、案の定勢いよくぶつかったな。マリーナだいじょ…


「お、おも…」


「悪かったわね!」


絶対防具のせいだから、防具が重いのが原因だと思うから、決してマリーナが重いわけが無い。


「す、すいません」


「て、てめぇ、前見てある…ってなんで二人がここにいんだよ」


「あら、バーカーじゃない。用心棒の仕事はどうしたのよ」


「今日は休みだよ」


「暇そうで何よりだわ」


「喧嘩売ってんのか。それよりも、イル同じ街にいたのか。暇だしちょっと付き合えよ」


「はぁ?」


「勝手に話を進めないで、私だってイルと行きたい場所があるのよ」


あの後、みんな別々の方向に行くから、てっきりこの街には来てないと思ったがまさか二人ともいるなんて、腐れ縁になっちゃうのかな。


「近い方でいいよ」


「あんたはどこ行きたいのよ」


「爆炎の鍛冶屋さ」


「はぁー!!あんな所に行くの。そういえば、あなた爆炎の信者だったわね。イルにあんな邪教に勧誘しないの」


「邪教とはなんだオススメの武器を見せに行くだけだろ」


「それが、いけないのよ」


あー、また始まった。本当にこうなると長くなるんだよな。爆炎の武器って言ってたっけ。バルトにいた門兵さんも変態呼ばわりしてたけど、どんな武器が売ってるんだろう。気になる


「ちょっと気になるな」


「ほらな!」


「イル、正気!?」


すると、急にバーカーは俺の肩を組んでくる。ずっしりとして地面にめり込みそうだ。マリーナより重いんじゃないか。


「よし、すぐそこだから行くぞ」


「もーーー」


そんな、傭兵キャンプに行くという目的は道のどこかに投げ捨てて、バーカーの言う鍛冶屋に向かった。そんな道中のことだった。あれは、集会か?人だかりができてる。


「あれなんだろう?」


「何かの集まりね、帝国の旗が経ってる…あれはエルガー派だ。って、あれエルガーじゃない」


マリーナがそう言い、集会の中心に立つ人物を探してみると帝国高官の軍服を来た一人の男が両手を大きく振り上げ、力強く民衆に訴えかけてきた。まあ、俺達には関係の無いことだけど。


「マイヤーは道半ばで名誉の死を遂げた!」


「え、もう報道するの?」


「マイヤーが死んだこともう報道していいのかよ」


すると、彼の隣に一人の女性が歩み寄る。マイヤーとの戦闘後、俺を射抜いたやつだ。


「彼女はマーシャ!マイヤーの護衛部隊に所属していた者だ。彼女はマイヤーの傍で戦った小さな英雄だ。この姿を見たまえ、英雄マイヤーを守るため、ルール帝国栄光のために戦った戦士の傷だ。確かにマイヤーは死んでしまった。だが、我々の躍進は止まらない。諸君らも一人一人が国を支える小さな英雄だ。ならば、そんな英雄たちに答えなくてはならない。我々は北部征服を一ヶ月で実現させてみせましょう!」


すると、周りの観衆が勘気づく。手を大きく掲げ「エルガー!エルガー!」とコールを鳴らす。まるで、神様みたいだ。


「すごいな…」


「エルガーなんて、ただの戦争犯罪者よ。裏ではエルフやドワーフ、獣人を迫害してるし、虐殺だって」


「おい、また誰か来るぞ」


「どうせ、知らない人よ」


バーカーの言葉につられて、エドガーを中心に周囲を見るとマーシャが降り、一人の少女が台の上に立ち上がった。深緑色のロングが特徴で、子供ぐらいの身長に見えるが、あの着崩した帝国の軍服を見るに成人はしてるのかな。て、マリーナ!?その手の動きは…


「バーカー!マリーナを止めろ」


バーカーの判断は早かった。すぐさま彼女の両手を掴んだ。


「ちょっ、ちょっとやめなさいよ。訴えるわよ」


「どうして攻撃しようとした!」


「い、イル…。ちょっと懲らしめようとしただけよ」


「どうして攻撃しようとしたんだ!」


「ひ…い、イルは彼女のことを知らないでしょうね」


すると、少女の声が辺りに響く。


「みなさん、今日はお集まり頂き感謝いたします。えー私はエルガー閣下に使える学者のユリア・キュリーと申します。お見知り置きを。」


学者?あの風体で。それにあの言動、人を小馬鹿にするようななんかムカつく抑揚のつけ方だ。本当に学者なのか。それとも、本当に子供なんじゃないか。そんな俺の疑いは正しいようで、さっきまでお祭りムードだった民衆たちとざわつき初めている。


「なんだ、ただの子供じゃねぇか。マリーナは考えすぎなんだよ」


「バーカー、イル。二人は知らないでしょうね。アトミック教を信仰する西の国で危険人物として追放されたことを」

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傭兵、3万ゴールドを貯める道のり ルンコフ @runnthiusu

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