推しが幸せになった。だから祝ってやろうと思う

物語は「推しの結婚」という一見ありふれたニュースから始まりますが、その知らせが語り手にとってどれほど衝撃的で深い悲しみをもたらしたのかが、痛いほど伝わってきました。感情の描写が非常に緻密で、心の中に積もる動揺や喪失感、そしてそれを受け入れようともがく姿がとてもリアルに描かれていました。

物語の前半では、まるで恋人を失ったかのような喪失感に囚われる語り手の姿が続き、読者も一緒に胸が締めつけられるような思いになります。「顔を黒く塗りつぶされた私」や「推しの傍に立つ資格を失った私」といった比喩が、自己否定の感情をより鮮やかに印象づけていました。

静かな感情表現や言葉の選び方がすごいと思いました。
主人公の推しが誰なのかきちんと明かされる点も好みでした。

このような経験をしたことはありませんが、もし経験したら、同じように感じるのかなと考えながら読みました。