家族の関係と家族の在り方について深く考えさせられる作品。主人公である姉は、家族からの依頼を受けて、久しぶりに妹の暮らす部屋を訪れます。しかし、そこで目にしたのは、かつての妹とはかけ離れた姿でした。彼女の生活は大きく変わり、精神的にも不安定な状態にあることが分かります。姉は、妹を救おうとするものの、その過程で自らの人生や将来と向き合うことになります。
序盤から緊張感に満ちており、姉妹の過去や家庭環境が徐々に明かされていきます。登場人物の心理描写が丁寧に描かれており、それぞれの立場や価値観がリアル。主人公の心の揺れ動きが細かく表現されており、彼女が下す決断に対して、読み手も一緒に考えさせられます。
妹を助けたいという思いと、自分自身の人生を守るべきだという思いの狭間で葛藤する主人公。現実においても、家族だからこそ関わりが難しいことや、どこまで手を差し伸べるべきか悩むことは少なくなく、読み手の共感を誘います。
簡潔ながら情景や心理を鮮明に描写する文章は、最後まで一気に読ませる力があります。終盤に向かうにつれて物語はより深みを増し、読後にもさまざまな感情が残ります。衝撃的な展開の中で人間の心の弱さや家族の複雑さが織り込まれており、考えさせられる作品でした。
凄いラストでした!
私だったらどうするか。考えさせられる話でした。
主人公は自分と違い不出来な妹が、ホストに狂い金のために風俗で働いている事を知り、何とかしたいと言う両親に頼まれて妹のマンションに行く。
そこで見た光景は‥‥‥。
読んでいて、妹のメンヘラ度合いに吐き気がしてきた。こんな妹は要らない、死んでくれた方がいいのでは、と考えている自分がいた。これは作者の巧みな誘導であろう。だから私も、主人公の行動に共感した。
主人公は、良い家の息子との結婚が控えている。妹は邪魔だ。
綺麗事では済まされない、誰もが陥る究極の選択。
あなたもそうするのではないですか?
すっっっごく面白かったです……。
第一話から妹が練炭自殺しようとしているというグッと引き込まれる導入でしたが、その次の話もその次の話も驚かされる内容で、次へ次へと読み進めてしまいました。
文字数制限のある短さの中でこれだけ読者をハラハラさせる場面をいくつも作れることが凄いです(しかも、確認したら文字数5000文字台。6000文字以下とは思えないほど読後の満足感があります)。
妹を苦しめているホスト本人に電話をかけたら家の中から音が鳴って……というところでもゾクッとしましたし、「あんたまさか」というセリフで状況を察して恐怖を覚えました。
さらに、主人公の「△△として✕✕されるより、◯◯してくれた方がありがたい」という発想が一番怖かったです(ネタバレ防止のため単語は伏せます)。
自分の結婚のために不出来な妹を犠牲にする残酷さ。ヒトコワというジャンルでしょうか……。ゾワゾワしっぱなしでした。良質なサスペンスをありがとうございます。
結婚を控えた主人公はある日、両親に妹の様子を見てくるようにと言われる。
大学生になって一人暮らしをしている妹は、ホストにハマって大学にも通わず、風俗堕ちしているらしい。
しかし妹の部屋へ行くと、なんと自殺をしようとしていた――
ここまで妹を追いつめたホストに電話をかけようと、妹のスマホを奪い、着信履歴からコールすると・・・
なんと着信音は室内から聞こえてきた!?
さて、これはどういうことなのでしょう?
ぜひ予想しながら読んでみてください。
そして最後、主人公は何を選択するのか?
たった5千字ちょっととは思えない満足感をくれる短編です。
現代の社会問題や風俗を鋭く描きながら、読む人にも倫理的選択を迫ります。
おすすめです!
こういう追い詰められて破綻した、ある意味自業自得な女性。
急激に増えたのか、それともクローズアップされていなかっただけでずっと前からたくさんいたのか、ともかく近年シャレにならない状態なのが浮き彫りになってきました。
悪質ホストの取り締まり関連はさておき、沼にはまり込んでしまったホス狂い女も、孤立しているようで決して一人ではないという現実があります。
人の子である以上、その親というのは必ずいますからね。
切りたいでしょう、その家族としては。
あるいは憐れんで、何とかして社会復帰を目指そうと沼の中に手を伸ばすか。
……自分は薄情な人間だという自覚があるので、切り捨ててしまいますね……。
誰も救われないお話ですが、知っておいたほうが良い現実として、この作品を一読されることをお勧めしたいです。
これは、日本のどこかでリアルに起こっている話かもしれない。
主人公の妹は、「ホスト狂い」になってしまい、人の話もまともに受け止められないような状態になってしまっている。
明らかに騙されているに違いないのに、ホストの「レイジくん」のために風俗で働くことまでする。
どんなに説得しようとしても、ホストだけが一番で、完全に「洗脳」されているとしか思えない。
そうして最後の手段で練炭自殺まで遂げようとしている妹に対し、主人公は強い葛藤を抱かされることになるが……。
この話を読んで一番に、「冷たい方程式」というSF小説のことを思い出しました。
宇宙空間を舞台にした話で、乗組員たちが生き残るためには、「ある種の冷たい決断」が必要になるというもの。
本作で描かれている内容は、そんな「方程式」に通ずるものだと感じました。
『情』というものを『重さ』に換算できるとしたら、一体「何グラム」となるだろう?
自分や家族が幸せに生きていくために必要な条件。何かがあれば幸せになれ、何かが紛れ込めば不幸になる。
不幸を回避し、幸せを得るためにはある種の「計算」が必要になる。
時には、何かを切り捨てることだって。
この作品を読んで、「冷たい方程式」の話は遠い宇宙の中での話ではないのだと感じさせられました。日本のどこか。ニュースでも報じられない都市部の片隅で、こんな出来事はいくつも起こっているのかもしれない……