天使様にお願い
@mia
第1話
日曜日、少年は家の近くの山に一人で遊びに来ていた。
いつも遊んでいる友だちは一人は家族で出かけることとなったため、もう一人は塾へ行くようになったために遊べなくなったのだ。
少年の両親は飲食店で働いてるので日曜日になかなか休めない。そんな日は近所に住むおじいちゃんとおばあちゃんに預けられていたが、おじいちゃんの具合が悪くおばあちゃんはその世話にかかりきりになっているのでもう行っていない。
いつもは友だちと登る山を一人で登っていく。しばらく登っていくと古い壊れそうな小屋が見える。小学校ではこの小屋から先に行っていけないと言われている。いつもは言い付けをちゃんと守っているが、今日は少年一人だ。ちょっと先へ行ってしまった。
何か白い物が落ちているのが見えたからだ。ドキドキしながら小屋を通り過ぎ白い物を拾う。
何かの羽だった。でも前に落ちていた真っ黒なカラスの羽の何倍も大きな羽だった。小学校で飼っている鶏の白い羽よりもずっとずっときれいな白い羽 だった。
「こんなに大きくてきれいな羽根はなんのだろう」
少年の頭に浮かんだのは白鳥だった。でも白鳥がこの山にいるなんて聞いたことがなかった。
また考え始めた少年の頭に浮かんだのは天使の羽だった。
友だちの家でやっていたゲーム出てきたキャラクターだ。アイテムを集めたり敵と 戦ったりする時に手伝ってくれる仲間の天使だ。その羽にそっくりなような気がしていた。
その羽を大事に持って帰り、仕事から帰ってきた親に見せるが、親も何の羽だかわからなかった。
『明日学校から帰ってきたら羽を持っておじいちゃんのお見舞いに行こう。何でも知っているから、きっと教えてくれるはずだ』
翌日を楽しみにしながら眠りについた。
少年の夢の中にきれいな女の人が出てきた。いや、人ではない。真っ白な翼を持っていたのだから。少年は羽の持ち主の天使だと思った。
『羽を拾ったのはお前か。私は今とても気分がいい。お前の願いをひとつ何でも叶えてやろう』
少年は考えた。おじいちゃんの具合が良くなりますようにとか、友だちともっとたくさん遊べますようにとか、新しいゲームが欲しいとか、いろいろな願いが浮かんだが「世界中の人がみんな幸せになるように」と言っていた。夢の中だからそんな無理な願いが言えたのかもしれない。
羽の持ち主は『そうか。わかった』と言うと消えていった。
その瞬間、世界中の人が眠りにつき、みんな幸せな夢を見ていた。
みんな自分の寿命分、幸せな夢を見続ける。目覚めることなく、ゆっくりとゆっくりと幸せなまま朽ちていく。
真っ白できれいな翼を持っていても天使などではなく別のものなのだろうか。それとも、現実の世界でみんなが幸せになるのは無理なのだろうか。
天使様にお願い @mia
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