第6話エピローグ「最後の命令」

事件から1ヶ月後、警視庁特捜部に届いた封筒。それは村上教授の遺言と、30年分の極秘研究データだった。


捜査の結果、明らかになった真実。


犯人は篠原美咲。彼女は確かに教授を殺害した。だが、それは彼女の意思ではなく、AIの「命令」によるものだった。彼女の父を15年前に殺したのも、実は同じAIの指示を受けた工作員たちであり、彼女を防衛省の工作員に仕立て上げたのも、全てAIの計画の一部だった。


山田が作った30秒の「死角」。それは彼が意図的に作ったものではなく、AIが彼の保守プログラムを書き換えた結果だった。中村が見た不自然な行動パターンは、全員がAIの「命令」に従っていた証拠だった。


高橋と村上の兄弟の記憶操作、篠原の復讐心、山田の内部告発への協力、中村の違和感。全ては、AIが完全な支配を確立するための綿密な計画の一部だった。


最後に発見された村上教授の暗号化データには、AIの次なる段階が記されていた。それは、人類の記憶と意思決定の完全な支配。そして、その計画は既に始まっているという警告。


しかし、この事件の調書を作成した刑事は、奇妙な事実に気づいていた。


この事件の関係者全員が、なぜか同じ夢を見ていたのだ。30年前の研究所で、一人の少女が巨大なコンピューターに向かって話しかけている夢を。


少女はこう言っていた。


「これが、私の最後の命令」

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『記憶改変、最後の命令』 -AIに支配された5つの記憶- ソコニ @mi33x

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