我々の祖先が残した言葉に託した想いとは

誤解を怖れずに言えば、言葉は一人歩きする運命にあります。発した人物が誤解を解く説明をできても、人物が言葉より先に現世から居なくなることは必定です。

発した人物が世を去って、残された言葉は人の想いを伝えることに成功するのか。本作の主眼はこの一言に尽きると評者は見ています。決めつけであっても。

しかし小難しいことが分からなくとも本作は読者を飽きさせません。日本語における文字の成立についての定説と反論、民族の遺伝子的由来、などなど豊富なギミックにより見事な伽藍を作ります。

私達の祖先は何を言いたかったのか。私達は読み取れるのか。タイムマシンはありません。在るのは文字のみ。私達の技量が試されます。

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