10角館の殺人

小石原淳

『十角館の殺人』を殺す方法

※小説『十角館の殺人』(綾辻行人 講談社ノベルス他)の真相を知っている人向けです。同作を未読の場合、まず意味が伝わらないと思います。

また、同作の具体的なネタばらしをしている訳ではありませんが、拙作を読んだ上で『十角館の殺人』を読むと、その構造を見抜きやすくなる恐れは非常に高まります。

再度、ご注意くださいますよう、お願いします。



             *           *



 推理研の面々が角島に向かう漁船の上にて。

「あんたら、あんなところに行って、一週間も何をするんだね? そもそも満足に寝泊まりするところがあるのやら」

「その点は大丈夫なんですよ。僕らと同じ推理研の一人が先に行って、あれやこれやと準備万端整えてくれた上で待っていましてね」

「へえ、そうなのかい」




 館にて第一の殺人が発覚した直後。

「なあ、みんな。思うんだが、とりあえずこのニックネームで呼び合うの、やめないか」

「え、どうして?」

「人が一人死んだんだ、それも仲間が。いくら我々がミステリ好きだからといって、この状況下でニックネームを使うのは不謹慎のそしりを免れない。違うか?」

「……そうね、その方がいいわ。これからは本名で」




 島田と守須とが初めて会い、互いに自己紹介をしたあと。

「そういえば、君は推理研では何て呼ばれているんだろう?」

「……何だと思います?」




 第二の殺人が起きる直前、皆でコーヒーを飲む場面。

「うん? ……ひぃ、ふぅ、みぃ……」

「どうかしたか。コーヒーカップを見つめて、ぶつぶつと」

「いや、何か昨日と手触りっつーか、感触がちげぇって感じて――ああ、やっぱりな。このカップ、違うぜ」




 口紅に仕込まれた毒で被害者が出たあと、三人で会話するシーン。

「――待て。煙草はやめといた方がいい」

「ん? どうしてだ。気持ちを落ち着かせるために――」

「そういうことじゃない。毒だよ、犯人が煙草に仕込んだかもしれないじゃないか」

「これに……?」

「そうさ。ミステリマニアとして恥ずかしいよ、何故、今の今まで疑いもしなかったんだ?ってね」



 ~ ~ ~



 犯人が最初の犯行としてオルツィを殺しに行く直前。

(……待てよ。本当に今、部屋にはオルツィ一人だけなのか? 推理研のメンバーで、恋人がいるのは自分だけだと思っていたけれども、それが正しいなんて根拠どこにもないぞ。実際、自分は皆には内緒で彼女と付き合ってきて、ばれなかったんだし。うーん、オルツィに恋人がいるとしたら、あいつ辺りか。もしいたら、まずい。ドアをこっそり開けて、中を覗いて確かめる……のはリスクありそうだよなあ。参った。今夜の犯行開始は中止して、明日一日掛けて、みんなに探りを入れてみるか。恋人がいるかどうかって……いや、たった一日で正確なところを把握できる気がしない……)

 犯人は今回の合宿での計画殺人をあきらめた。

(次の機会までに、部内の人間関係を調べ上げるとしよう……)



 ~ ~ ~



 終わり



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

10角館の殺人 小石原淳 @koIshiara-Jun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ