【短編】第21回骨連総会議事進行
山本倫木
第21回骨連総会議事進行
こんな夢を見た。
「とにかく近頃の
第21回
「人体に平和と安定をもたらす血球を生産しているのは我々なのだ。ところが、この頃の
「全くです」
「
左右の
しかし、
その後、
ここに至って、多数決は数の暴力と化した。どんな議題も
「いやいや、それは一方的な見解というものですよ」
「
「いやー、でも、暴飲の方はね、もうちょっとだけ、何とかなりませんかねえ」
おそるおそるマイクを握ったのは、
「
出来れば
「なんだ、今の発言態度は。貴様はそれでも
発言を終えた
「いやあ、あの
彼は言い訳をした。
「お前は
この発言を傍で聞いていたのは
「
「脳は、先日の失恋で強いストレスを抱えて苦しんでおられます。すなわちアルコールに一時の助けを求めているという側面もあるのではないでしょうか。そこを考慮せずに、ただ暴飲を慎めと主張をするのは、片手落ちの発言というものでございましょう。反対をするのであれば、是非、代案を出していただきたい、代案を」
そう言うと、
「我々
「
「
「我々、
「一つ付け加えるなら、同意をしておりますのは我々
胸骨は『心臓』という部分を強調した。安保理を牛耳る
「ふむ、なるほど」
頃合いと見て、
「アルコールと
心臓を引っ張り出したことで、
「まずは総会に出席している諸君らの意見を聞こうではないか。今の提案に賛成の者は起立してもらおう」
「ほお、総会では賛成多数のようだな」
「私は反対なんだが、なあ」
「なあ」
続いて
「ふむ。すると総会ではこの案は賛成多数のようだな」
「とはいえ、これは重要な議題だ。この議題は総会ではなく、安保理で預からせていただこう」
「待て。安保理の議題は平和と安全に関するものに限るはずだ」
「分かっているとも。アルコールと
「貴様、何を言っているのか分かっているのか!」
「分かっているとも。そして、私はきちんと骨連のルールに則って話をしている。そのように声を荒げられるのは心外だな」
「
「見逃せん、と言ったな。今の発言は、宣戦布告と捉えてよろしいか」
「待ってください」
沈黙を破り、左小指の
「我々は争う必要なんてないはずです。骨同士で争って何になりますか」
彼女は小さな体を直立不動に
「
呼びかけられ、双方の
「
「
今や議場の目は、
「大勢いる私たちは一つの体であり、一人一人が互いに器官なのです。それぞれが自身の役割を果たすべきであり、そこに互いが争う必要などありません。意見の違いはあるでしょう。しかし我々が互いに協力し合うことこそが、一心同体たる我々のなすべきことではないでしょうか。今一度、なぜ骨連というこの場が開かれているのか、その意味を考えていただきたい」
彼女はまっすぐに立ち、一息に発言した。静まり返っていた議場に、彼女の声が染み入っていく。
ぱん
誰かが手を叩いた。まばらに起こった拍手はすぐに広がっていき、やがて議場全体を包む嵐となった。2つの
〇
第9代国連事務総長アントニオ・グテーレスは目を覚ました。
奇妙な夢を見たものだ。枕元の時計を見る。普段の起床よりも少し早い。目が覚めてしまったのは今日から始まる総会に緊張をしているのか。アントニオは半身を起こした。
「骨同士で争って何になる、か」
アントニオは独り、つぶやいた。左手を開く。見慣れた自分の掌だ。主要骨同士の対立に割って入ったのは、ひと際小さい隅の小指だった。
世界に問題の種は尽きない。にも拘わらず、いつの世も大国は自国優先の姿勢を変えようとはしなかった。人の世が続く限り、これは変わらないのかもしれない。昨今の国連は機能不全とさえ言われることもある。それでも―
「小指には、負けていられんな」
アントニオは立ち上がり、今日の支度を始めた。
【了】
【短編】第21回骨連総会議事進行 山本倫木 @rindai2222
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