第3話 プラタナスの葉の散りて触れしを

じいじの家の近くを通る道路には鈴懸すずかけの木が街路樹として植えられていた。

この木が石川啄木の句


思出のかのキスかとも

おどろきぬ

プラタナスの葉の散りて触れしを


のプラタナスだと知ったのは20歳を過ぎてからじゃった。


こんな文学的な街路樹がじいじの町にもあったんだ!と少しばかり感動したものじゃったよ。

秋になると丸い実をぶら下げて、葉っぱがひらひらと落ちてくる。5つに分かれた形の独特な葉っぱを見て紙飛行機のように飛ぶんじゃないかと試してみたが駄目だった。子供の頃は何でも遊び道具にしたものじゃったのう。


そう言えば

「君と語らん鈴懸のみち」という歌詞の曲もあったな。


大木になって電線にぶつかるとか言って、いつの間にか全部伐採されてしまった。今はヤマボウシという白い花が咲く木が植えられている。良くハナミズキと間違えられるが、アメリカハナミズキは葉っぱが出る前に咲く。ヤマボウシは葉っぱが茂ってから咲くし実の形も違う。こっちの実は食べれるそうだが試したことは無い。赤っぽいオレンジ色のイチゴに似た実じゃよ。


じいじのひとり言もこの辺でお開きとしよう。寿命が尽きる前に何か思い出したらその時にまた会おう。



終了じゃ。またな、さらばじゃ。

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短編 じいじのひとり言 霞千人(かすみ せんと) @dmdpgagd

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