骨の髄まで尽くしたい
阿弥陀乃トンマージ
はじまりの夏
日本の東北地方は宮城県仙台市に、巨大な才能がいた。
彼は小学校低学年から野球を始め、四年生の時点で、中学生の試合に混ざっていた。投げては剛速球が唸りを上げ、打っては場外ホームランを連発していた。
彼は中学校からバスケットボールも始め、成長期を迎えた己の体ととともに、ぐんぐんと台頭していった。2メートル近い身長での素早い動きで無双した。
彼は高校からアイスホッケーも始めた。スケートは子どものころに少しかじった程度だったが、すぐにコツを掴み、巧みなスティックさばきと相まって、銀盤を支配した。
彼は大学からアメリカンフットボールも始めた。2メートルに達していたがっしりとした体は防具の下にさらに鎧を着込んでいるようであった。フィジカルで周囲を圧倒した。
彼は野球ではずっと四番打者でありエースピッチャーだった。バスケではスリーポイントシュートもバンバン決めるセンターだった。ホッケーでは、当初は攻めのポジションだったが、やがてゴールキーパーとなり、守護神として君臨した。アメフトでは、大学から始めたにも関わらず、クオーターバックとして、攻撃の司令塔を任されていた。
そんな彼の存在を、当然の如く周囲は放っておかなかった。大いなる熱狂で彼を包んだ。そのフィーバーは広い太平洋を隔てた隣国、アメリカ合衆国にも波及。MLB、NBA、NHL、NFL……一二〇を超える球団が彼を、
彼には幼馴染がいた。
野球では年長の男子も捕れないような剛球を体全体で止めに行った。肉が傷んだ。
バスケではドリブルに磨きをかけた。ボールを常に触っていた。皮がむけた。
ホッケーではフィギュアスケート仕込みの華麗な滑りで極力接触を避けた。心が疲れた。
アメフトでは厳しい筋トレに励み、果敢にタックルを繰り出した。骨が軋んだ。
それもこれも超人の支えになりたいがためである。健気を通り越して、もはや狂気すら感じさせるような振る舞いであったが、周囲の人々は温かく、妙美のことを優しく見守った。
妙美は超人のトレーニングパートナーを務めるのみならず、食事学などを学び、料理の腕も磨き、栄養バランスの整った食事を超人に提供した。英語も猛勉強した。超人の誘いに当然の如く応じ、アメリカのテキサス州ダラス市――四大スポーツのチームが揃った、仙台の姉妹都市――に共に渡った。
「骨の髄まで尽くしたい」と妙美は思っていた。ただ、気になることがあった。超人がゲイ寄りのバイセクシャルであるということだった。妙美は内心で頭を抱えるのだった。
骨の髄まで尽くしたい 阿弥陀乃トンマージ @amidanotonmaji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます