影の中の祈り
脳幹 まこと
内なる太陽を求めて
創作者とは宿命的に不幸である。多かれ少なかれ不幸である。
この不文律の証明は容易い。なぜなら、創作とは不幸・不平・不満が原動力であり、それらを持たない者は、そもそも創作をする必要性がないからだ。
特に、神という庇護者を失った今においては。
現状で満ち足りることを知らぬ者だけが、創作を志す。
それが名誉のためであれ、金儲けのためであれ、表現のためであれ。その者は創作を通じ、欠けているものを補いたいのである。
それは言うならば、太陽である。
胸の底が空洞であればあるほど、僅かな隙間風が冷たく、痛みに変わる。
凍える創作者はマッチを
なるほど、自分の身に訪れた至上の幸福を描いた人物もいるかもしれない。
たとえば初恋は美しく、その瑞々しさを表現した詩作もいくつかはある。「見てくれ、私はこんなにも幸せなのだ!」と叫ぶ者もいるだろう。
そういった純朴な精神を持つ人物が、果たして長い時を傷つかずに生きていったのか。昔ばなしの「幸せに暮らしましたとさ」を信じられたのも、自分の身体に
創作をしている間、不死身の化物にでもなったような気持ちになる。
創作の中で創作者は無敵になれる。自分を幸せにすることも出来る、他人を
クラシックでも、ロックでも、ポップでも、演歌でも好きに流せばよい。
何をしてもよい。何もしなくてもよい。
虚しさを覚えさえしなければ。
太陽の光を浴びさえしなければ。
太陽を求めているのに、その光を浴びるとその身体は崩れてしまう。矛盾が何となく愛おしい。
多くの創作者が太陽を求め、また太陽を作り出そうとする。
自分の影が濃い者ほど、より神格化された太陽を求める。単なる天体ではない、太陽系という言葉が生まれ、醜く矮小になる前の、すべてを統べる存在としての光を。
創作者よ。
私は自分で自分を笑いたくなる。
お前が全存在を賭けて作ろうとしているものは、太陽ではない。太陽ほどに大きいマッチだ。
一個人の半生を、泥沼の現状を、確信に近い不安を、この胸中の苛立ちを、燃料として作られたマッチだ。
太陽に比べ、著しく短い時を燃えてゆく。
創作は楽しさこそあれど、やはり大半は辛いものだ。
その辛さは、自身の不幸を直視することになる点に尽きる。
無力、嫉妬、(理想との)
年齢を問わず、どこかで「時間を注ぐに足るか」を考えることになる。
辞めて去る者も少なくない。その者は実に聡明だ。創作と比較するに足る何かが生まれたのなら、そちらを選べばよい。
自分の影を眺めることはいつだって出来る。誰だって出来る。
そうだ。深い闇を持つ人よ。太陽の届かぬ場所にいる、凍えた異端者よ。
創作者にならないか?
素質がある。
永久に燃えることは出来ずとも、その激情は太陽よりも熱く大地を焦がす。
穏やかな光に馴れた彼らに、人間の
分かっている。こんなのは、はた迷惑な話だ。
周りにいる人物まで抱き込んで、一緒に燃えつきようというのだから。
しかし、分かって欲しい。
仕方がないのだ。
創作とは、極まれば精神的な爆弾になる。様々な形で恐怖をもたらす。
驚嘆すらも、恐怖の一種である。感動とは、心の平穏を脅かすことで初めて成立する。
平穏を脅かされた経験など、たくさんしてきただろう。
だからこそ、素質がある。
前述した通り、創作とは自分の不幸を直視することであり、場合によっては触ったり、味わったりしなければならない。
何十、何百と
また、仲間がいるとは限らない。というより、独りが大前提である。
なんと心細く、不明瞭であろうか。自分の辿った道と同じように感じられるだろう。
その先に出来上がるのは、一本のマッチだ。
指先サイズか、太陽サイズになるかは、情念の量次第だ。
それを擦るかどうかは任せる。
一度擦れば、もう止まらない。燃え尽きるまで燃え、その範囲にあるものを焼きつくす。
それが、創作という行為の効果であり、残るは胸中の穴と、つい先ほどまであった物体の灰だけだ。
太陽のない場所で、太陽を超える強烈な光、熱を生み出さんとする行為。
強い光は、それだけ周囲に濃い影を生み出すことになる。
それが多くの恐怖と嫉妬を生み出す原動力となる。淡い影にいる人も揺り動かすだろう。
不幸という言葉が、忌まわしきものから解き放たれんことを、暗闇の中で祈っている。
影の中の祈り 脳幹 まこと @ReviveSoul
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