雪降る昼間に
みかみ
文字にしない、あなたへの手紙
世界にうっすらカーテンを引くように、雪がしんしんと降っています。
その光景を、ほんのり温かい部屋の窓から覗いているうちに、ふと、あなたを思い出しました。
世界から私を切り離す雪の重たさ。浸食を拒む外気の冷たさ。それを窓一つ隔てた空間から眺めている私をつつむ、ほどけるような温かさ。
そのギャップは、あなたという人間そのものです。
かつての私は、あなたに散々翻弄されました。なのにあなたはいつも、なにくわぬ顔で独り静かに佇んでいた。
寝ぐせだらけの黒髪。サイズの合っていない、皺だらけのシャツ。ぼそぼそと低い声で呟かれる、聞きとりにくい返答の数々。
あなたの外側を形作るそれら全てが、私という人間――いえ、この世界の人間誰もが、自分には無関係なのだと言いたげでした。
なのにあなたは、対面した相手の心を瞬時にほぐす柔らかな笑顔の持ち主でもあったし、誠実さに満ちた言葉しか口にしなかった。
私はそれがとても腹立たしく、また、羨ましくもあったのです。
私は今日、何もしない事に決めました。
ただ窓から外を眺め、私と世界との間に引かれたカーテンの中で、どこで何をしているとも知れないあなたの幸いを願いながら、一人でまどろみます。
この雪が、私を思い出の中に閉じ込めている間は。
~了~
雪降る昼間に みかみ @mikamisan
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