廃墟あとそうじ人
釣ール
さいしょはそうかんがえていた
いいよダイイングメッセージなんて書かなくて
ふたをしまって頼まれた場所に車で向かう。
動物とか植物を攻撃したくない。
でも修行にはちょうどいいから更新は毎回している。
人の
あくまで
二級以降は簡単には合格できないが。
他にも俺は別の一面がある。
むずかしい横文字だけで説明するとコンタクトスポーツだ。
顔が良いとほめられるが、見てくれと相性が悪いのかいいのか分からない競技もそうそうない。
しかも俺の頼まれごとはほとんどが
心霊?
心霊か。
そんなものはいない。
でも人間はついてまわる。
そいつらも時代によって動き方を変えてくる。
わざわざ無許可で
俺はそいつらを安全な方法でつかまえるだけだ。
*
俺が
「投稿されてきた映像をチェックしていたらこの
本当にいるんだ。
記者会見やらインタビュー以外でマスコミと会うなんてめったにないから。
いや、それを言うと俺が顔を売っていないみたいじゃないか。
「見たところ心霊とかホラーは信じてなさそうだね。ならよかった」
良いのかなそれ。
でもいないならいないでいいか。
もしかしたらメイクをたのまれるかもしれない。
依頼内容は迷惑系ライバーをこらしめてくれとしか言われていない。
ホラードキュメンタリースタッフについては聞いてはいないが映像の検証としてインタビューされるのも悪くない。
「えっと、安心してください。映像について情報を調べるだけで君とは別の依頼だから」
じゃあインタビューとかないのか。
それもそうか。
映像の内容は知らないけど俺がここの関係者としていきなり出たら視聴者が
その方がよっぽどホラーだし、別件なら料金が高くなりそうだ。
俺の仕事を上手く利用して映像を撮るつもりなのは頭の
それでも今まであってきたマスコミと違ってスタッフは段取りをある程度教えてくれた。
俺に依頼した管理会社はおそらくホラードキュメンタリースタッフにも
にもかかわらず彼らは俺を
俺たちは準備に数時間かけて
*
「ここでまちがいねえ。まだ知られていない
「そんなことあるか? この情報化社会で特定されていない
「もちろんだ。だから他のカモがやってくる。自分達が先に見つけたと思いこみながら」
「さっき別のカメラマンが見えた。俺達がカモにされてるんじゃね?」
「やつらはただの使いっ走りだ。俺達がいても抵抗はできねえ」
「セキュリティつってもこんだけ勢力がいるマイナーな
「おどす相手は俺達がねらう馬鹿だけじゃねえ。さっきいたカメラマン達にも金を渡してもらわないと」
話し声が聞こえてくる。
いつの間にか別の
話しながら
へえ。
マイナーな
俺達がここをつきとめているのも予想しているのに。
もしかしたら登録者が10万を超えた無数のライバー達がここにいるホラードキュメンタリースタッフよりも安く速く動画を作りに全世界の
良くは知らないが魅力がある建物なのかもしれない。
だからといって荒らすのはよくないなあ。
俺はふだん、日常では出していない性格を出すことにした。
「今どき再生数稼ぎで
「いわくつきの建物に無断で入るガキがいまだにいるし、俺達と同じ目的の奴らもいる。そいつらをおどして情報と共に金を巻き上げるだけだ」
「こんな手荒なことしちゃ、俺らがやられそうだけど」
「俺達は自殺を考えた仲だろう? でもよお、俺達が
「それもそうか。つかまる覚悟でおどせばひよった奴らに一泡ふかせてやれる」
「気にならないか? 本当に人間が泡ふいて倒れる姿?」
〝なら 自分達が 経験してみればいいじゃないか〟
侵入者は男二人。
ちょうどいい
「だれだてめえは?」
「カメラマン達の仲間か? お前らが俺達を撮ってたって意味はねえ。有り金全部わたせ!」
一人の男のほほを何かがかすめた。
「え? いたっ。いつの間に血が?」
「うわああああ」
罠を作動させて一人
「人間を
足を天井につるしてるだけ。
まるで映画の宇宙人が強い男を狩った後にするように。
「誰だ! 出てこい!」
〝出てきたら 出てきたで 驚くのは そっちだと思うけど〟
「ぐっ」
「俺達もおどして金をとるんじゃないのか? 腕っぷしに自信がある発言をしておいて二人でこの程度じゃ無計画過ぎる」
夜の
理解あるマスコミ。
そして侵入者。
試合の時しか顔を見せないもう一人の俺が片腕で男の首をしめる。
悪く思うな。
先に手を出したのはそっちだし、
どうやったか知らないが俺達を利用して侵入されたのも腹が立つし。
「わ、わかった……はなして、くれ……何もしない」
「そういって何もしない奴らを俺は知らねえ! つるしておくよ。侵入者!」
良い絵になると思う。
なるほど。
今の気持ちがクリエイターの喜びってやつか。
俺は動画を収益目的には使わないから分からなかったが。
それはともかく事件はここで終わった。
あとは別のプロに任せよう。
*
管理会社からの依頼は終わった。
今回は。
そしてホラードキュメンタリースタッフの安全を守ったからか、頭を下げて頼まれた。
「俺がスタッフ? いや、別の仕事あるんで」
ドラマになるようなことはしていない。
むしろ放送が出来ない。
それでも頼まれてしまった。
「インタビューは自然な感じがいいですか?」
あの時暴れた俺の姿を弱みにされる可能性もある。
それでもこのホラードキュメンタリースタッフ達はコンプラを守ってくれそうだ。
『廃墟あとそうじ人』
いかにもジャパニーズホラーってタイトルセンスにちょっと興味が湧いた。
これなら他の競技者よりも
次はどの
新しい楽しみが浮かぶ俺の今の性格は少しだけ、あの夜の俺が顔を出しているかもしれない。
廃墟あとそうじ人 釣ール @pixixy1O
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