蘭花が話し終えると、すぐに弓岡恵子が反応する。

「鏡堂さんって、どうして他人事でそんなに怒ったんですか?

自分の退学まで賭けて」


「随分後から聞いた話なんだけど、達哉の高校時代の友達がクラブの指導教員の行き過ぎた扱きに堪えられなくて、自死してたみたいなの。

だから〇田さんの話は、あいつの逆鱗に触れたのね」


「ああ、そういうことだったんですね。

でもそれで退学賭けるなんて、カッケーですよね」

「単に直情径行なだけだと思いうけどね」


「でも、女子からしたらちょっと惚れちゃいますよね。

その上月さんとか、どうだったんですか?」

弓岡が興味本位で訊くと、蘭花は苦笑交じりに答える。


「上月さんは、達哉みたいな暑苦しい奴はタイプじゃなかったみたい。

パートナーとしてって意味でね。


実際彼女、工学部の先輩だった漆原亨うるしばらとおると付き合って、婚約まで行ったいたみたいだけど」


「漆原って、もしかして例の」

弓岡が驚いて訊くと、蘭花は肯いた。


「そう。去年連続爆破事件で逮捕された漆原教授ね」

「ええー」

皆が蘭花の答えに驚く中、彼女は更に驚きの事実を伝えた。


「上月さんは大学を卒業した後、警察に就職したの。

そして一時期達哉とバディを組んでたらしいのね。

その最中に殉職されて。


これは於兎子ちゃんから聞いた話なんだけど。

それが原因で漆原さんは、あんな事件を起こしたみたいね」


蘭花の言葉に座がしんみりとした雰囲気に包まれる。

そしてそれを嫌った蘭花が、突拍子もないことを言い出した。


「ちょっと暗い雰囲気になっちゃったから、変えようか」

そう言ってスマホを取り出した蘭花は、一つの写真を三人に見せる。


それはパンクメイクをして、中指を立てる二人の女性の写真だった。

「これ誰だと思う?」


写真を見た三人が不審気な表情を浮かべるのを見て、蘭花は会心の笑みを浮かべた。

「これはね、佐和子先生と由紀子さんなの」


「えーー!まじっすか?」

「まじよ。あの二人、パンク国松姉妹で有名だったのよ。あの頃」


「ぎゃあ、ホラーだ」

「ミステリーでしょ」

「ほぼSFだよね」


三人三様のリアクションの満足した蘭花は、

「くれぐれも私がこの写真を見せたことは、二人には内緒ね」

と釘を刺す。

それに頷く弓岡と田村。


そして栗栖は、

「〆に親子丼とうどん頼もうかな」

などと嘯いていた。

こうして〇〇大学リケジョ女子会の夜は更けていくのだった。


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【鏡堂達哉怪異事件簿外伝】〇〇大学リケジョ女子会 六散人 @ROKUSANJIN

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