早く大人になって欲しい


「───って先輩に説明したら納得してくれたの」

「へー…」

「妙ちゃんに見せて貰ったけどキョウ君雑誌に載ってたから、神様になりかけてて血が大丈夫かなって、心配してたんだろうね」

「そうだなぁ…(多分違うけれどどう澪に説明するかなぁ)」


澪の学校が終わって四月一日家に送り届けている最中、昼間に起こった出来事をされて微妙な気持ちになる。俺も似たような話を鬼塚さんにしていたな。


「鬼人や半神の人って周りの人に心配されて大変だね。花人の人と結婚出来ないと出世出来ないんでしょ?」

「花人も大変だろ。殆ど人間と変わらないのに人口1割で草花を咲かせる能力がある。その希少価値から誘拐とか横行してて、海外何かじゃ花人ってだけで1人で外出歩けないって話だぞ」

「日本は平和で良かったねぇ」

「そうかぁ?」


日本でも花人の相手好みの蜜を生成する体質から、人体実験や如何わしい薬品会社で裏社会で高値で取引されて、農家の嫁不足が深刻で国を介さない違法な見合いや、誘拐事件が後を絶たない。


故に花嫁学校の校章と生徒手帳には、GPSが取り付けられている。


「変わりに日本でも年頃の女の花人だけで放課後の遊び歩きもは禁止されてるけどな、よっちゃんと妙ちゃんと3人で放課後遊びたかったりしねぇか?」

「んー、私はキョウ君と一緒に遊べたらそれで良いや」

「そうか」

「今日はお父さんの仕事と桐の部活で帰りが遅いから、一緒に晩ご飯作って食べようね」

「ああ」


だから澪が家で1人にならないように、昔から父さんと母さんには帰りが遅くなる事は言ってある。何なら休日じゃなくてもそのまま泊まりになる事も珍しい事じゃない。


俺は澪の〝菊の花〟以外の花が生えている頭を撫でる。


あの日から澪の頭に菊の花が咲く事は無い。毎朝澪が鋏で切り落として仏壇の前の水が張った入れ物の中に生けて、学校に通っているからだ。その菊の花を俺は枯れる前に飲み込んでいる。


澪の頭に菊の花が咲く事を知る人はごく僅かで、澪の学校の人の殆どは知らないだろう。その事に独占欲が湧かないかと言えば嘘になる。


でも菊の花を生やし笑顔を振り撒く澪が綺麗で可愛い事を知っている。


だから早く大人になって俺の家に居るようになって、誰の目にも煩わされる事無く、菊の花を生やして笑顔で出迎えて欲しい。


それを考えると俺は澪に早く大人になって欲しいと思った。


「キョウ君、置いていくよ?」

「ああ、今行く」




現代編恭一郎×澪 Fin


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レイスバース 弥生いつか @yayoiituka

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