第8話

 さて、ここでとっておきのネタを出す。


「秀吉殿……。信長様の葬儀代をピンハネしたね? ちょっとね~、看過できない額なのよ」


「何のことですかな?」──ギク


 秀吉は、汗が止まらない。

 ここで、滝川一益殿が証拠の書状を出した。


「証拠は揃っているんじゃ~! 言い逃れできると思うなよ!?」


 書状を一通ずつ確認して行く。一益殿は、商人まで呼んでいたよ。

 この状況を狙って作っていたんだな。

 いや、ここで断罪するために出陣したのかもしれない。

 進んで汚れ役を買ってくれたのか。

 

 買値と証文を比べると、倍くらいピンハネしてるよ。もうちょっとさ、見つからないようにやろうよ。酷すぎだ。世話になった、信長様を何だと思っているんだよ。

 これを織田家が知れば、打ち首じゃ済まないよ?


 秀吉は、黙ってしまった。そして、崩れ落ちた。

 急ぎ過ぎたね。数年待てば、財も成せたろうに。中国大返しで破産したんかね?


「そんじゃ、反論はなしね。追って沙汰を出すから、謹慎しててね。それと、引越しの準備ね。暑いところがいい? 寒いところがいい? 東回りがいい? 西回り? 希望があれば聞くよ?」


「……ははっ」


 秀吉は、泣いて下がって行ったよ。

 秀吉が去った後に、三人で笑う。儂と、滝川一益、細川藤孝だ。

 いや~、断罪する側って、気持ちいいね。





 猿(秀吉)は、長浜城の城主とした。昔、信長様に与えられた城だね。

 周辺は、俺の部下で囲んでいるので土地を得ることはないだろう。

 どんなに策謀を巡らせても、城一つではできることに限りがある。

 秀吉も、先の展望がないのか、大人しくなった。

 ちなみにもう活躍させたくないので、戦にも出さないことにした。大人しく、長浜城で隠居しててね。


「これで秀吉の再起はないな。もう戦に出す気はないんだし。後は、三方師様が天下人として立派に成長してくれたら儂も引退かな~。そのためにも、器量のある人物に育てないとな~」


 残り、十年程度だ。頑張ろう。

 上杉家と毛利家は、のんびりと調略していこう。織田家が内紛してんのに攻めて来なかったから、両家とも安泰じゃないって分かるし。

 それと四国の長宗我部だな~。一年放置してしまった。四国は、どうすっかな~。


 関わっていないのが、九州と奥州だ。島津家と伊達家がこれから頭角を現してくる。放置するか、頭から叩き潰すか、悩みどころだ。


「ふう~。戦場で槍を振るっていた頃が、一番気楽だったな~」


 高山右近が答えてくれる。

 長年付き従ってくれた、宿老でもある。

 バテレン追放令で、国外に行かなくて良かったね。まだ分かんないけど。


「【鬼柴田】とも評されておりますが、三方師様も懐かれております。お市の方様も幸せそうでなによりです。私が断言します。殿は、織田家家老の中で最高の戦略家です。織田家は、柴田殿を筆頭家老としたことにより、日ノ本を統一するでしょう」



 おう? 評価が変わってんじゃん。

 儂って融通が利かないとか言われてたんだけどな。

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【鬼柴田】の策謀劇~勝家は織田家を死守します~ 信仙夜祭 @tomi1070

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