第8話
さて、ここでとっておきのネタを出す。
「秀吉殿……。信長様の葬儀代をピンハネしたね? ちょっとね~、看過できない額なのよ」
「何のことですかな?」──ギク
秀吉は、汗が止まらない。
ここで、滝川一益殿が証拠の書状を出した。
「証拠は揃っているんじゃ~! 言い逃れできると思うなよ!?」
書状を一通ずつ確認して行く。一益殿は、商人まで呼んでいたよ。
この状況を狙って作っていたんだな。
いや、ここで断罪するために出陣したのかもしれない。
進んで汚れ役を買ってくれたのか。
買値と証文を比べると、倍くらいピンハネしてるよ。もうちょっとさ、見つからないようにやろうよ。酷すぎだ。世話になった、信長様を何だと思っているんだよ。
これを織田家が知れば、打ち首じゃ済まないよ?
秀吉は、黙ってしまった。そして、崩れ落ちた。
急ぎ過ぎたね。数年待てば、財も成せたろうに。中国大返しで破産したんかね?
「そんじゃ、反論はなしね。追って沙汰を出すから、謹慎しててね。それと、引越しの準備ね。暑いところがいい? 寒いところがいい? 東回りがいい? 西回り? 希望があれば聞くよ?」
「……ははっ」
秀吉は、泣いて下がって行ったよ。
秀吉が去った後に、三人で笑う。儂と、滝川一益、細川藤孝だ。
いや~、断罪する側って、気持ちいいね。
◇
猿(秀吉)は、長浜城の城主とした。昔、信長様に与えられた城だね。
周辺は、俺の部下で囲んでいるので土地を得ることはないだろう。
どんなに策謀を巡らせても、城一つではできることに限りがある。
秀吉も、先の展望がないのか、大人しくなった。
ちなみにもう活躍させたくないので、戦にも出さないことにした。大人しく、長浜城で隠居しててね。
「これで秀吉の再起はないな。もう戦に出す気はないんだし。後は、三方師様が天下人として立派に成長してくれたら儂も引退かな~。そのためにも、器量のある人物に育てないとな~」
残り、十年程度だ。頑張ろう。
上杉家と毛利家は、のんびりと調略していこう。織田家が内紛してんのに攻めて来なかったから、両家とも安泰じゃないって分かるし。
それと四国の長宗我部だな~。一年放置してしまった。四国は、どうすっかな~。
関わっていないのが、九州と奥州だ。島津家と伊達家がこれから頭角を現してくる。放置するか、頭から叩き潰すか、悩みどころだ。
「ふう~。戦場で槍を振るっていた頃が、一番気楽だったな~」
高山右近が答えてくれる。
長年付き従ってくれた、宿老でもある。
バテレン追放令で、国外に行かなくて良かったね。まだ分かんないけど。
「【鬼柴田】とも評されておりますが、三方師様も懐かれております。お市の方様も幸せそうでなによりです。私が断言します。殿は、織田家家老の中で最高の戦略家です。織田家は、柴田殿を筆頭家老としたことにより、日ノ本を統一するでしょう」
おう? 評価が変わってんじゃん。
儂って融通が利かないとか言われてたんだけどな。
【鬼柴田】の策謀劇~勝家は織田家を死守します~ 信仙夜祭 @tomi1070
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