六、新緑の旅立ち

 ヒーリングミュージックが流れ、眠りを誘うエッセンシャルオイルの香りが漂う店内には、四席のリクライニングチェアが横に並んでいる。リラックスできる雰囲気に満ちた独立開業店で働きながらも、満たされなさが拭えない。夕暮れ時に施術できる日もあるが、日中はチラシ配りと客待ちに明け暮れ帰宅する日々のくり返し。

 このままでいいのかと、何度も自分に問いかける。

 海呂くんのように、頑張っている人々に寄り添い、癒せる技術を高めるためには、自分をもっと磨く必要がある。

 あの日出会った海呂くんの姿を思い出すたび、誰かを元気にできる力を持ちたい思いが募り、かつて大阪で見たブリティッシュグリーンの店舗が脳裏をよぎる。

 スクールを開校している会社は、資格を持つ卒業生のみが働く直営サロンの経営しており、全国に数十店舗ある。大型連休明けには、関西地区の店舗で働くためのサロン研修が行われると、スクールインストラクターから教えてもらった。

 サロン配属されれば、経営や接客の経験を実践的に積むことができる。研修に参加しても合格できるかどうかはわからない。それでも、自分の成長のためには、さらなる一歩を踏み出さなければならないと直感した。

「私は足りないことだらけです。だからこそ、この機会を逃したくないんです」

 独立開業の店の人達に頭を下げて退職すると、すぐに大阪で行われるサロン研修に参加する希望を提出。口座から貯金を全部下ろし、キャリアケースに荷物を詰め込むと、覚悟を決めて大阪行きの電車に飛び乗った。

 日差し高くなる初夏のことである。

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Re:リフレクション snowdrop @kasumin

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