時代と伴に

星之瞳

第1話

「うーん、こんなことが行われていたんだ」

「あら、千秋ちあき何うなってるの?」

「あ、紅葉くれはこれ見てよ。レポートで靴を調べていたら出てきたんだけど」

「え、10センチの靴?これって成人女性よね」

「そう、13世紀ごろのから中国で行われていた纏足てんそくされた人が履いていた靴なのよ」

「纏足って、子供のころから足を縛って小さくするっている風習よね。今は禁止されているみたいだけど」

「え、紅葉知ってるの?」

「私も靴には苦労していてね、調べたことがあるのよ。確か4,5歳の幼女の時から親指を残して残りの指を足の裏に曲げて細い布で固定する。12歳ぐらいになって固定出来たら今度は土踏まずを深くするように固定して足を小さくするんだよね。纏足された人はつま先でちょこちょこしかあるけなかったそうよ」

「そうなんだ、だから靴が10センチしかないのか。その頃の中国って足が小さいのが美人の象徴だったみたい」

「そう、それに纏足した足だとまともに歩けないから、働かなくていい裕福の証だったそうよ。でも、それが徐々に庶民にも広がっていったようね」

「でも、この記事読んでいると、体にものすごい負担がかかったようね」

「ええ、失敗して歩けなくなったり、菌が入って亡くなる人もいたそうだから」

「え~!この時代に生まれなくてよかった!!」

「でもね、少し違うけど日本でも40年ほど前は同じ様なことがあったのよ」

「同じ様なこと?この日本で?」

「ピンヒールの靴って知ってる?」

「知ってる。かかとの高さが9センチぐらいあって、先の細い靴だよね。今じゃ夜のお勤めの人しか履かないと思うけど」

「そう、でもね、ピンヒールではなくても働く女性の靴はヒールのついたパンプスって決まっていたみたいなのよ。その頃の靴って先がとがっていてかかとも小さかったからつま先にかなり負担がかかっていたらしいわ」

「そうなんだ、紅葉なんでそんなこと知ってるの?」

「お母さんが言ってたのよ。お母さん足幅が広くて当時2Eの靴幅が狭い靴しかなくってつま先がすぐ痛くなってとても苦労したって。今は5Eの靴もあるし、普段からスニーカーで外出できるから楽よねだって」

「そのEって何?」

「靴の幅のサイズのこと。普通は数字が大きくなるにしたがって同じサイズでも幅が広くなるの。お母さんのころは靴に足を合わせるのが当たり前だったけど、外反母趾とかいろいろ問題が出来て、幅の広い靴が出来たり、企業の意識も変わってきたからね。デパートや飛行機の搭乗員もそんなに高いヒールは履かなくなったし。今は足に負担を掛けない靴を選べる時代になったってとこかな」

「いい時代になったんだねそう言えば紅葉靴に苦労しているって言ってたけどどうして?」

「私ね、左足が右足よりも少し大きくて長いのよ。だから靴を選ぶ時左足のつま先が痛くなりやすいの。だからヒールの靴なんて履けないわ。靴下やストッキングも左のつま先だけ破れやすいし。高校もローファーを履かなくていい学校を選んだぐらいなの。左に合わせると右が歩くと抜けたりするからしょうがないんだよね。だから靴の事を調べたり、母から話を聞いたりしたんだ」

「そうなんだ、いまはいいよね。スニーカーで通学できるから」

「そうね、就職する時もヒールを履かなくていいところにしたいから資格の勉強頑張ってるの」

「そうか、紅葉のおかげでレポート書けそうよ。ありがとう。今度お礼するね」

「お礼なんかいいわよ。じゃ、私が困ったら相談に乗ってね」

「うん、もちろん」


私はパソコンへと向きなおした。紅葉の話はとても興味深かった。

「さ、いい情報を得たんだから、レポート完成させるわよ」


時代伴に変わる靴と人のかかわり。つま先が痛くならない靴を履けるのは幸せなことなのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時代と伴に 星之瞳 @tan1kuchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画