第10話 誕生日おめでとう。ただ、それだけ伝えたかった。

「これで最後、どうしても伝えたい誕生日おめでとう、だけ言って辞める」

そう覚悟を決めたひなのは、お決まりのスマホのメモ帳に、伝えたい気持ちを書き綴った。


その文章がこれ。

「柚果、お誕生日おめでとう!

覚えてたよ~良い1年になるといいね。

わたしはいつも、柚果の味方だよ〜!

生まれてきてくれて、本当にありがとう!

今度良かったら、通話しようね~」


そしたらさ、これに対してはカナリ早いタイミングでありがとう、って来たんだよね。

ひなの、良かったね♡って言いたいほんと。笑

でもさ

「通話しようね〜」ってのに対してはスルーだった。そんなの気にしなければいいのに。

こーゆーとこで気にしてしまうのは、ひなのの悪い癖だった。気にしぃの宿命なんだろうか……。

ひなのはそう思った。


実はこの数日前、ひなのは部屋で1日中泣いていた。

なぜなら、このおめでとうDMを送ったら、もう2度と送らないって決めちゃってたから。

そうすることで、その辛さから逃げたい。

そう思ったのさ。

なんでそんな思考になるの?って謎な人も多いとは思うが、ひなのはそんな風に考えてしまうタイプだった。


返事がもらえなくて辛い。

だからそのことから逃げるために、送るのをやめる。

そしたら、もう辛い思いはしなくていいって。だけど、本心は……。

もう2度と送れないのは辛いし悲しいって感じてた。だから泣いてしまっていたのさ。

難しいね。基本、ネガティブシンキングなひなのにはこんな考え方しか、できなかったのさ。


でも、そのあともやりとりは続いた。

「ちゃんと誕生日覚えてたよ~!忘れずに♪

最近も眠れてないんでしょ?

わたしもさ、大学の時に眠れなくなっちゃって、病院で薬もらって飲んだ時あったよ。だから、不眠の辛さはよく分かる。

メンタルも身体もしんどいよね。

どうにかして、眠れるようになるといいんだけど」


この言葉達はひなのの本心をしっかりと伝えてくれたはず、ひなのはそう思っていた。

言葉って不思議。使い方によって、いろんな伝わり方をする。

だからこそ、言葉選びはとても大切だ、とひなのは感じていた。

言葉1つで、相手の心を喜ばせることも、反対に嫌な気分にさせることもできる。

ひなのはそれを良く分かっていた。

その後はたわいもない会話が少しだけ続いた。なかなか返事がなかったので

「こんなに嬉しいことがあるだろうか

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あたしの愛を受け取りやがれ!〜ひなのと彼女の物語〜 服部優香 @kixichan12

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