第7話 誰かの役に立てるんですか!?
あの事件から数日が経ちました…。
母ワニの亡骸は私の燃える猛毒で火葬をして残った骨を沼の底に沈めました…。子ワニたちは母ワニを呼ぶように何度も泣き続けていました…。
私の場合はあのように死んだのかな…病気で死んだのはわかるけどもなぜ死んだのかは思い出せません…。でも「ごめんね…ありがとう…お母さん…」は以前言ったことがある気がします。
私はいったい誰なのか…母ワニの遺品である歯を見つめながら洞窟内で考え事をしていました。
「あれ?先客がいるとは珍しい」
「ひえっ!?誰ですか?」
洞窟の中に大きなリュックを背負った1人の男性が入ってきました。ここのことを知っているということは元の持ち主では!?
「す、すみません!勝手に使ってしまって!何とお詫びしたらいいか」
私は必死に頭を下げました。それ対して男性はニコッと笑い私の頭を撫でました。
「いいよ、逆に有効活用してくれた方がこっちとしては嬉しいよ」
「そうですか…あはは…って!私を触って平気でしたか!?」
私に触れて猛毒の影響がないかの宣言したか確認を忘れることがあるので聞きました。
「え?特に何も…どうしたんだい?」
その言葉を聞いてホッとしました。そしてやっとまともに会話が出来そうな人に出会えてよかったです。
「まずは自己紹介をしようか。俺はエバーフ。君の名前は?」
「スズです…」
「ところでスズちゃんはかなりの軽装だけど、よくここにいるね。大丈夫だったの?」
「はい、ここには食料になるキノコや果実がありますし、沼で水分補給も出来ますから…」
「キノコ…もしかしてキノコが減った理由が君で、危険な沼にも行ったと!?」
エバーフさんは大変驚いていました。それは当然でしょう。普通の人には危ないものがあると私にもわかりますから…。
「実は私、猛毒のカラダなんです。それを使い…こなせていませんが…」
「猛毒とな…」
私はここまでのことを全て話しました。ここに来る前の記憶がないことやカラダの特性のこと。沼で母ワニが痛い思いをしているのを見て巨人になったことも含めて…。
「うーん、もしかして君は転生者かもしれないね」
「転生者…ですか?」
「前の世界で死んだ時にこの世界に生まれ変わったり死んだ直後の姿で現れる。そして女神から不思議な力を授かるんだ」
「女神…?私会ってませんが…」
「でも条件は当てはまってると思うんだがなぁ」
私は女神に拒まれたんでしょうか?あの光は何だったんでしょうか?記憶の件も含めて謎が多いです。
「そういえば猛毒で気になったんだけどさ」
と大きなリュックからビーカーを取り出して石段の上に置きました。
「この中に向こうにあった虹色キノコの毒を出すように想像してこの中に入れてごらん。ちなみに名前はダイサクランダケだ」
「ダイサクランダケ…」
そのキノコは最初は味付けして食べてみましたが、一度だけ生で食べた時は美味しかったです。猛毒のカラダなので影響はありませんでしたが…。
私は指先をビーカーの上に差しました。
「私の指先から『ダイサクランダケと同じ毒が流れます』」
ぽちゃん…ぽちゃん…ぽちゃん…
指先から虹色の液体が流れ落ちています。エバーフはそれをじっくり見て驚いた顔でこう言いました。
「同じだ…いや…通常の量よりも多くエキスが流れている…」
ある程度流し終えるとエバーフは大きなリュックから水と別のビーカー2つにガラス棒、すり鉢、植物の葉、粉を数種類用意していました。
「あの量ならこのぐらいで…粉の量もこれくらいか…あとは全てを混ぜて水の量もこれぐらいで…」
焚き火に向かって「ファイア」と火を付けました。私が出した毒とエバーフが作ったものを1つのビーカーに入れました。ガラス棒で混ぜ始めて最後に試験管をポケットから取り出し少量を入れて火で炙る。しばらく経つと綺麗な青色の液体になりました。
「出来た!ブルーポーションだ!」
エバーフはそのポーションを飲み出しました。
「ちょ!大丈夫ですか!?」
「全然平気!むしろ疲労回復した気分だ」
そう言われて私も飲みたくなったので頼みました。ブルーポーション…どんな味かというと……わかりませんでした。猛毒のせいでかき消されたのかな…?
「君はここに居続けるのは勿体無いよ!ぜひ俺の街に来てくれ!」
「え…でも…猛毒ですよ?私は…」
「薬は毒性の物から出来るものもあるんだ!あ、俺は薬師で薬品を取り扱ってるんだよ」
「じゃあ…もう一人ぼっちじゃないってこと…ですか…?」
「まぁ、そういうことになるな」
「……よかったぁ…よかったぁぁ…」
「うわっと…まだ君の指からダイサクランダケのエキスが!!」
私はこのジャングルから人のいる場所に行くことに決めました。離れる前に子ワニたちに「大きくなってね」と別れの挨拶をしました。いつかまた来れたらいいな…。
エバーフが薬品の材料になるものを集めてからジャングルに抜けました。最初に触れた花畑は真っ黒のままでした。
ここの世界にいる理由も猛毒のカラダのこともわからないままですが、誰かの役に立てられるなら新しい人生を歩んでも良いかなと思っています。
「さて、街までは長いぞー!頑張って行こうかー!」
「…はい!」
母ワニの歯を大事に持って私は街へと向かいます。多くの人の助けになるように頑張って生きます!
恐怖!?毒娘!〜転生したら猛毒なカラダで困ってます〜 きいろいの @kiiroino
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