ブロッコリー日和

　誰かに呼ばれる夢から覚めた青年は、戦争の影を宿す街で、かつての幼なじみの少女と出会う。

　学校もレポートも放り出した彼に、彼女は容赦なく言葉を投げかける。

　やがて二人の会話は、ある寓話「ブロッコリーを愛した熊の物語」へと変わり、それが戦争と喪失の記憶へと繋がってゆく。

　少女がふと呟いた一言。

　彼は自分の語ることが、他者の痛みを呼び覚まし、傷つけてしまったことに気づく。

　奪ってきた者と、奪われた者。

　語ることと、沈黙すること。

　忘れ去られたものと、今ここにいるもの

　やがて彼は「他者」を「見守る者」となり、晴れ渡る空の下、「声」が静かに受け継がれてゆく。

　罪と許しのあいだに流れる、おだやかな「ブロッコリー日和」