零話目の怪談、既に怪至る

百物語の作法をご存知だろうか。
諸説様々にあるものの、宵の口から集まり
一人ずつ『怪談』を語る。この時、同様に
百話分用意された行燈の火を一つずつ吹き
消して行く。百話目が語り終えられると、
最後の火も吹き消されて、辺りは闇に
包まれる。
      そして 怪 が生ずる。

この行燈には青い薄紙が貼られている事で
最後に生じた怪異を 青行燈 とも呼ぶ。
青い陰光に照らされた鬼女の姿を、何某の
書籍で見た事があるかも知れない。

一方、大陸では死者の事を 鬼 と呼ぶ。
そして 青行燈 についての怪談も全く
違ったものになる。

ここまでは、知る人ぞ知る。
この短編が怖いのは、まさに最後の数行に
凝縮される。恰も灯りのある屋内から突然
戸外の暗闇へと放り出されたような。
 何故、この会は開催されたのか。そして
主催者は 何者 なのか。
それを想うと。