第7話 「永遠の雪女」



山が、目覚めた。


明美の巨大な白い肉体が、山全体を覆い尽くす。

その表面には、数十年分の犠牲者たちの顔が浮かび上がっては消えていく。


「完成よ」


彼女の声が、雪崩となって轟く。

その轟音と共に、救助隊のヘリコプターの音が近づいてくる。


「新しい獲物が来たわ」


山頂から、無数の白い触手が伸びる。

その先端の牙が、ヘリコプターを引きずり込む。


「誰も、逃がさない」


私の凍りついた意識の中で、最後の光景が見えた。


明美の白い死体の群れが、雪と化して山を覆い尽くす。

遭難者を探しに来た救助隊も、観光客も、全てが彼女の餌食となっていく。


山は今、完全な白銀の牢獄と化していた。


私の体は、もう完全に白い氷の柱となっている。

その中で、永遠に意識だけが生き続ける。

これが、明美の愛した「永遠の美」。


吹雪の中で、彼女の笑い声が響き続ける。


この雪山は、永遠に人を喰らい続けるだろう。

全てを白く染め上げ、全てを明美の一部とするために。


(終)

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『喰う女 −白雪の狩場−』 ソコニ @mi33x

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