第4話 エピローグ「春を待つ」



「全て繋がりました」

木村は証拠品を並べながら説明を始めた。


園田は三年前、「雪月花」に細工をしていた。刀身に仕込まれた特殊な保存剤。それは温度変化で結晶化し、紫外線で反応する物質だった。


彼は自身の死を偽装。その間、美術館の警備システムを遠隔操作できるプログラムを完成させていた。


「目的は名刀の偽物をすり替えること」

中島が補足する。

「本物は三年前、既に盗まれていた」


山田は古い設計図を指さした。

「園田は毎年この日に、温度システムを狂わせていた。今日こそ、偽物が発見される日にしようと」


しかし予想外のことが起きた。

警備システムの裏プログラムが、園田の意図と違う動きを。


「私です」

中島が告白する。

「前任者の不正に気付いて、プログラムを書き換えました」


停電が解除され、展示室に光が戻る。

床に散らばった白い粉は、保存剤の結晶。

血痕に見えたものは、紫外線反応物質。


そして防犯カメラが捉えていたのは、罠にかかった園田の姿だった。彼は数時間後、空港で身柄を拘束された。


「では、本物の『雪月花』は?」

木村の問いに、中島は静かに答えた。


「春の訪れと共に、戻ってきます」


(完)

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「零度の証明 ―名刀『雪月花』の真実―」 ソコニ @mi33x

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