ホワイト・アウト それダメ絶対なヤツ

深川我無

勘弁してくれよ

「空野。イエティを探しに行こう」


 勘弁してくれよ……


 ひと気の無い第二図書室で星崎の囁く声無数の古書に吸い込まれていく。


「今それどころじゃないだろ……」


 とりあえず正論で返しておく。


 今は本編がそれどころじゃないのだ。


「ビッグフットの懸賞金は二億円。イエティの懸賞金も同等と推測する。これは一大事。二億円あれば捜査が進展するのは確実」


「二億円あればな。だいたいイエティなんているわけないだろ?」


「ふっ……これだから情報弱者は困る」


「スマホも持ってない人に言われたくありませんが?」


 星崎の手に握られた、古臭いうえに胡散臭い陰謀論系雑誌の特別号を指差して言うと、星崎は目を細めて軽蔑するような眼差しで僕を見た。


「古臭い本……それも胡散臭いと思っている顔。ネットの情報はどれも一次ソースを欠いたコピーのコピーのコピーのクローンみたいなもの。昔の本には執筆者の血の滲むような調査という根拠がある」


 言い返す言葉が見つからない。


 こうして僕はいつもこいつの訳のわからない屁理屈みたいな正論に従う羽目になる……


 仕方なく次の休み、僕は彼女に付き添って近くの山に出かけた。


 鈍行に揺られるうち、辺りにはチラホラと雪が積もり始める。


「なあ……本当にその格好で雪山に行くのかよ……?」


 毛玉だらけのフリースと制服のプリーツスカート。 


 足元はモコモコの靴下とローファーという何ともチグハグな姿の星崎に僕は言う。


 彼女は毛糸のニット帽を深々と被り直して答えた。


「ちゃんと目立つ色のニット帽を被っている。空野は完璧に登山者の格好。気合が入っていて感心する」


 気合なんか一ミリもねぇよ!


 とは言わずに、僕は小さく項垂れた。


 勘弁してくれよ……


 こうして僕らは遭難することとなるのだが、それはまたいつかの機会に話すことにする。


 思い出しただけでも寒過ぎるし、あんなこと……



 いや……なんでもないっ……!


 あんなのはただの吊り橋効果なのだから……



 end?



 お読み頂きありがとうございます★

 この空気感が気に入って下さった方は、ぜひ本編にも遊びに来てね🌸


 本編リンクはコチラから〜(*´ω`*)


https://kakuyomu.jp/works/16818093087633098391


 二人のやり取りとSF青春ホラーを楽しんで頂ければ幸いです☃


 よいお歳を〜🎍

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