第23話 やりうどん、福岡の味を未来へ
晴れ渡る空の下、北九州市小倉駅近くに新しくオープンした「やりうどん北九州支店」。店の前には「やりうどんの新たな一歩」という大きな看板が掲げられ、地元の人々や観光客で賑わっていた。
優はスタッフとともに準備を終え、店の外に立って集まる人々を見渡していた。たくさんの顔が期待に満ちた表情を浮かべている。
「ここまで来られたのも、みんなのおかげです。本当にありがとう。」
優はそう言って頭を下げると、スタッフたちは大きな拍手で応えた。
「いらっしゃいませ!おすすめは北九州限定の『小倉牛甘辛天ぷらうどん』です!」
開店と同時に店内はたちまち満席となり、注文が次々と入る。地元の人たちも、「北九州スペシャルメニュー」を楽しみにして来店していた。
「これが小倉牛の天ぷらうどんか……甘辛いタレがたまらない!」
「焼きカレー風のかき揚げも面白い!これは地元ならではの味だね。」
厨房の中ではスタッフたちが忙しく動き回りながらも、全員が笑顔だった。
「やりうどんの味が北九州にも届いた……!」
優は胸を熱くしながら調理場で働いていた。
オープン直後から順調な滑り出しを見せるやりうどんだったが、その動きを見ていた三大チェーンは黙っていなかった。
数週間後、資さんうどんが小倉駅近くに新店舗をオープンし、「北九州グルメフェア」を開催。特に「小倉牛の肉うどん」が話題を呼び、地元メディアでも大きく取り上げられた。
「三大チェーンは資金も知名度もあるから、こういう時に一気に攻めてくるんですね……」
スタッフのさつきが不安げに言う。
「でも、私たちには私たちのやり方があります。地元の人たちにしっかり寄り添い、やりうどんの味を届けるだけです!」
優はスタッフを励ましながら、さらなる努力を誓った。
三大チェーンとの競争が激化する中、やりうどんは地元民とのつながりをさらに深めるための取り組みを始めた。
北九州支店では「地元の味交流会」を定期開催し、地元の農家や食材の生産者たちを招き、直接お客様と対話してもらう場を設けた。これにより、やりうどんは単なるうどん屋ではなく、「地元を支える存在」としての地位を確立していった。
「この野菜は、糸島の朝採れなんですよ!」
「小倉牛を使った天ぷらは、今日のために特別に仕込みました!」
お客様はその一言一言を楽しそうに聞きながら、うどんを味わっていた。
オープンから半年後、嶋村が突然やりうどんを訪れ、優に話を持ちかけてきた。
「俺はここを離れることにした。」
「えっ……嶋村さん、どうして!?」
嶋村は静かに笑いながら答えた。
「やりうどんはもう、お前たちだけで十分にやっていける。俺の役目は終わったってことだ。」
優はその言葉に涙を浮かべながらも、大きく頷いた。
「嶋村さん、本当にありがとうございました。嶋村さんがいなかったら、ここまで来ることはできませんでした。」
嶋村は店を出る前に、ひとつだけ言葉を残した。
「この先、お前たちのやり方でさらに新しい道を切り開け。俺もどこかでお前たちの噂を聞くのを楽しみにしている。」
それから数年後、やりうどんは福岡全土で知られる存在となり、北九州支店も地元の人々に愛される店となっていた。三大チェーンとの競争は続いていたが、やりうどんは「地元密着」という強みを武器に、独自の道を切り開いていた。
ある日の営業終了後、優は厨房でスタッフたちと語り合っていた。
「やりうどんの挑戦はまだまだ続きますね。」
「そうだね。でも、地元の人たちに支えられている限り、私たちはどこまででも進めると思う。」
そして、優はノートに新しい一言を書き加えた。
「次は全国進出への挑戦!」
優の視線の先には、さらなる未来が広がっていた。
【毎日12時実食】やりうどん大戦記 ~福岡三大チェーンに挑むうどん革命~ 湊 マチ @minatomachi
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