第22話 地元密着の挑戦、北九州の心を掴め

北九州でのポップアップ出店が成功を収め、やりうどんの名前は確実に広まりつつあった。しかし、優はその反響に満足することなく、さらに地元に根付くための次の一手を考えていた。


「観光客にはアピールできたけど、本当に大事なのは北九州の地元の人たちに“日常的に通いたい店”だと思ってもらうことよね。」


スタッフたちは優の言葉に頷いた。


「でも、どうやったら地元の人たちにもっと親しんでもらえるんでしょうか?」

さつきが首をかしげる。


「地元に根付くには、地元の人たちと繋がる仕掛けが必要だと思うの。」優はそう言って、手元のノートに新しい計画を書き込んだ。


「『北九州限定フェア』を本店で開催します!北九州の食材を使ったメニューを追加して、さらに地元の人たちと一緒に楽しめるイベントを開くの。」


北九州フェアのため、優たちは北九州の特産品を活かした新メニューの開発を始めた。


「まずは小倉牛の天ぷらをもっと進化させましょう。たとえば、小倉牛を甘辛く煮てから天ぷらにするのはどうですか?」

「いいですね!その甘辛い味がお出汁と合いそうです。」


さらに、門司港で有名な「焼きカレー」に着想を得て、カレー風味のかき揚げ天ぷらを作る案も出た。


「焼きカレー風のかき揚げ天ぷら?それ、面白いね!カレーのスパイスが天ぷらに加われば、観光客も興味を持ってくれそう。」

「それに、地元民にも馴染みがある味ですしね。」


こうして、「小倉牛の甘辛天ぷらうどん」と「焼きカレーかき揚げうどん」という2つの北九州限定メニューが試作されることになった。


新メニュー開発と並行して、優は北九州市内で行われる「食と文化の祭典」という町おこしイベントへの参加を決めた。このイベントは北九州の地元企業や飲食店が集まり、地域活性化を目指して行われるものだった。


「このイベントなら、もっと多くの地元の人たちにやりうどんを知ってもらえるチャンスになる!」


さらに、優はイベントで「地元の味を楽しむトークセッション」を企画した。地元農家や食材の生産者を招き、やりうどんの新メニューがどのように北九州の食材を活かしているかを直接語ってもらう。


「お客様に生産者さんの話を聞いてもらえれば、うどんの魅力ももっと伝わるはずです。」


ついに「北九州限定フェア」と「食と文化の祭典」がスタートした。やりうどんのブースには「北九州限定メニュー」が大きく掲げられ、多くの人が足を止めていた。


「これが小倉牛の甘辛天ぷらうどん?めっちゃ美味しそう!」

「焼きカレーかき揚げうどんって、門司港の味をうどんで楽しめるのが新しいね!」


イベント内のトークセッションでは、生産者たちが糸島野菜や小倉牛の魅力を語り、それを使ったやりうどんのメニューがどれほどのこだわりを持って作られているかが伝えられた。


「この天ぷらに使われているナスは、朝一番に収穫したものなんです。甘みが強くて揚げても美味しさがしっかり残りますよ。」

「小倉牛は肉質が柔らかく、甘辛い味付けとの相性が抜群なんです!」


客たちはその話を聞きながら、やりうどんの新メニューを味わい、感動を口にした。


「生産者さんの話を聞いてから食べると、もっと美味しく感じるね!」

「このうどん、地元の味が詰まってる感じがする。これはまた食べに行きたいな。」


イベントの終盤、嶋村が会場を見渡しながら優に声をかけた。


「いい雰囲気だな。お前たちのやり方が北九州でも通用することが証明されたんじゃないか?」


「はい。でも、これで終わりじゃありません。この反響をどうやって次に繋げるかが重要だと思います。」


嶋村は満足げに頷き、言葉を続けた。


「その通りだ。このイベントで生まれた繋がりを活かして、やりうどんを北九州の日常にどう溶け込ませるかが次の課題だな。」


「はい!次は、もっと地元の人たちが気軽に通いたくなるような工夫を考えてみます!」


イベント終了後、優は本店に戻り、スタッフたちとともに次の計画を練り始めた。


「地元の人たちが、もっと気軽にやりうどんを楽しめるようにするには、やっぱり店舗展開を考えるべきかな……?」


「北九州に支店を作るってことですか?」

「そう。イベントでの反応を見てると、それが現実的な次のステップかもしれない。」


優の頭には、北九州でのやりうどんの未来が鮮明に描かれ始めていた。そして、その挑戦の先には、三大チェーンとのさらなる競争が待ち受けていることを確信していた。


「必ず、北九州にやりうどんを根付かせてみせる!」


優の戦いは、まだ終わらない。

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