第7話 一寸法師(元ネタ)と巨乳女子高生の顛末

 それから、すぐに童子の姿に戻った俺は、襟と並んで家に帰る事となった。


「買い物の帰りに、狂四郎さんとすれ違って、その後すぐにあの妖怪に行き合ったの。彼も巻き込まれていないといいんだけど……」


「……。若い娘だけを狙う妖怪らしいから、大丈夫だろ」


 想い人を心配する襟に、その妖怪を生み出したのは、恐らくその想い人自身だという事は俺には言えなかった。


「そっか。なら、よかった」


 安堵している襟を前に俺は考えていた。


 妖怪を生み出す人間は、現行犯で天界の者に押さえられた場合、無害化するか、殺されるかのどちらかだという。


 奴の怨念は凄まじいが、元はと言えば、「自分だけ彼女が出来ない」無念から発生したもの。

 六条襟と森崎狂四郎の仲がうまく行けば、襟の想いは成就し、妖怪は発生しないし、いい事ずくめなのではないかと、そう思った時……。


 ふわん……。


 この先の二股道の左方向から、いい匂いがして来た。

 霊界タブレットで地図を確認すると、屋台の「たい焼き屋」が表示された。


 ああ、下界波テレビで下界の食べ物として紹介されてるの見たことあるけど、美味しそうだったんだよな。

 襟にねだろうと思った時、二股道の右方向に思わぬ人物の表示が出た。


「……!(森崎狂四郎!)」


 奴、まだこの辺り徘徊してんのかよ!


 怨念を妖怪として出してしまった為、スッキリしたのか、今は邪悪な反応は出ていないようだった。


「襟、この先」

「あ、あのさ。一寸法師!」

「お、おう??」


 襟に知らせようとした途中で呼びかけられ、驚いてそちらを見遣ると、彼女はちょっと照れたような表情になっていた。


「さっきは、助けてくれてありがとう。一寸法師すごくカッコよかったよ?////男も悪いばっかじゃないのかもね……」


「襟っ…」


 恥ずかしそうな笑顔を向けられ、不覚にもドキッとしてしまった俺に、彼女は更に続けた。


「私、一寸法師に勇気をもらった気がする。次、狂四郎さんに会った時は素直になって、告白してみようかな?」


「っ……」


 あと、10歩で二股路。

 右を行けば、森崎狂四郎。

 左を行けば、たい焼き屋。


「あ、あのさっ。襟!!この先の二股路で……」

「??」


 意を決した俺は襟に話しかけた。


「左を行くとたい焼き屋さんがあるみたいだ!助けてやった礼に奢ってくれよ!」


        ✽


『くそっ。女なんて……!』


 はふっ。はふっ。

「あれ〜?」

 10分後、俺は、襟にねだって買ってもらったたい焼きを頬張りながら、現在の森崎狂四郎の画像を霊界タブレットで確認し、首を捻っていた。


「(おかしい……。俺は、襟とあいつをくっつけてやろうと思っていた筈なのに、なんで……??)」


「もう、一寸法師!人に奢らせといて何その顔。まったく、褒めるとすぐ調子に乗っちゃうんだから……!」


 襟はそんな俺にブチブチ文句を言いながら、軽くなった財布を握り締めたのだった……。






 ✽あとがき✽


 最後まで読んで下さり、ありがとうございました!


 一寸法師の元ネタの男の人がいたというのは、史実ではなく、全くのフィクションです。

 おとぎ話の主人公のイメージを崩れる等ありましたら、大変申し訳ないです。

 どうか作者が妄想を膨らませた創作物として、温かい目で見守って下さると有難いです。


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お伽童子 東音 @koba-koba

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