雪の降る中で

鐘を鳴らす怪物

雪の降る中で

シンシンと雪が降る中で、声が聞こえる。「おーい。おーい」と僕を招く声が

聞こえる。でも、声はするけど。姿かたちはなく。真っ白な雪の景色の中。

声だけが聞こえてくる。「おーい。おーいー」と僕にしか聞こえない。声が

聞こえてくる。しかも、僕にしか聞こえない。この声は、前にどこかで

聞いた事がある。どこか、懐かしい。声だった。雪が降る中。僕は、昔

一個上の亡くなった。兄の事を思いだしていた。兄とは、よく積もった

雪の中で、よく遊んだ思い出が蘇る。「いいか。兄ちゃんが、いい物

見せてやるよ」僕よりも、体が小さい兄は、僕にイイ物を見せると

張り切っていた。兄は、雪の中走り出して。「イイもん見せてやるから。

そこから動くなよう~」「うん。わかった」と兄が戻って来るのを

待っていた。でも、いくら待っても。兄は戻っては来なかった。

雪の中を走り出した。兄は、雪に足を奪われてしまい。そのまま崖下に

転落したと。周りの大人が話していた。当時の僕は兄の死よりも、兄が

僕に何を見せたかったのか。それが気になってしょうがなかった。

月日が経ち。高校生になった。僕は、雪が降る中。白い息を口から吐きながら。

家に帰ろうとしていた。その時に、あの声が聞こえるようになった。

「おーいーおーいー」と僕を呼ぶ。兄の声に、僕の足は声のする方に歩き出した。

「おーいーおーいー」その声がする方向に黙々と歩き出す。次の一歩を雪が積もる

地面に付けようとした。その瞬間、僕の体は崖から転がり落ちた。こんな所に

崖なんかないはずなのに・・・・・・。そのまま、僕は崖から落ちて。

死んでしまった。あれは、きっと亡くなった。兄が、僕をそっちの世界に招いて。

僕に兄がイイ物を見せようとしたんだと思う。雪が降る中。僕は、死んだ兄の声

のせいで。死んでしまった。僕の周りには、真っ白な雪を侵食するように。

僕の真っ赤な血がキレイに染みていた。

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雪の降る中で 鐘を鳴らす怪物 @yo-81u

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