これは一人の『歴史学者』が『歴史家』となり、確かな人類の足跡を紡ぐ物語

物語の舞台は中世欧州のドイツにある都市リューベック。
その地に主人公が転生し、そして歴史の裏側に隠れてしまいがちな事象、具体的には商人の取引や都市行政、国家との争いを「一個人の目線」で描いた作品となっています。

歴史上の偉人、例えば王や貴族の目線で描かれていない作風に大きな価値がある、と私は感じました。

『歴史』というものはどうしても、その時代の国家の上流層がパピルスや羊皮紙、紙などに記して後世に伝えられがちです。

しかし、この作品に関してはあくまで『歴史』に名を残すことはないだろう、それも下っ端の商人見習いが昇進しつつも、やはり上流層とは言い難い立場のままで日々の記録を記していく、という点に特色があるようにも思われました。

『歴史』を紙面でしか知ることができない私たちには知りようがないことを、主人公は肌感覚で知ることができる。換言すれば「その時代を生きている」実感を得られる、とでも言えましょうか。

「彼は五感で、書物を読むだけでは味わえない感覚を味わえる。なんて幸せなんだ!」と読み終えた直後に思っていました。

私もいつか、こんな経験をしてみたいものです!
おすすめの作品です。ぜひご一読ください!