初代ポケモンはなぜ面白かったのか?

矢木羽研(やきうけん)

発売前の話

 発売前、初代ポケモンこと『ポケットモンスター赤・緑』(以下、単に二重カッコ入りで『ポケモン』と書いた場合は作品自体を表す)はほぼノーマークだった。せいぜいテレビでCMが流れていたのを覚えていたくらいである。当時から『ファミマガ』などの雑誌では特集されていたようだが、この頃はゲーム雑誌を読む機会がほとんど無かった。


 もともと、ファミコンやスーパーファミコンで『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』などのRPGは好んでプレイしていた。ゲームボーイでも『聖剣伝説』をクリア済み。そんな私の目には、テレビCMを見てもあまり魅力的に映らなかった。


 だいたい、任天堂といえばアクションゲームのイメージが強く、RPGとは結びつかなかった。この時点では(同じ任天堂の)『MOTHER』シリーズも未プレイであった。一応、翌月に発売を控えた『スーパーマリオRPG』には注目していたが、これはスクウェアとの共同開発だからこそであり、任天堂単体でRPGが作れるイメージがなかった。もちろん、ゲームフリークという会社については存在自体を知らなかった。


 CMでは通信ケーブルを使って「モンスターを取り替えっこ」することが強調されていた。この通信ケーブルというのも存在は知っていたが使ったことはなかった(『ドクターマリオ』などの対応ソフトはいくつか持っていたが、通信プレイをしたことはなかった)。本体2台に加えて別売りのケーブルを使わなければ二人プレイしかできないというのは、最初からコントローラが2つ付いているファミコンなどと比べてひどく不便なものだと感じていた。


 そもそも、モンスターを交換して何が楽しいのかよくわからなかった。この時点では単なる収集対象にしか見えなかったのである。普通のRPGを進めつつ各地で「モンスター」というトロフィー的な存在を収集していき、それは通信ケーブルで交換できる。当時CMを見て抱いたイメージはそんなものだったと思う。

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