図鑑集めの楽しさ
というわけでほとんど注目していなかった『ポケモン』だが、発売からほどなくして兄弟が買ってきた。プレイする傍ら、付属の説明書を読んでみることにする。なるほど、ポケモン(カッコを付けずに書いた場合、作中に登場する生物としてのポケモンを指す)というのは戦うバトルするパーティメンバーでもあるのか。そして主人公は戦わないのか。今でこそ珍しくなくなったが、当時「主人公が戦わない(戦闘メンバーではない)」というのは極めて斬新だったはずである。
そして気になる通信交換。これを使えば他のプレイヤーとポケモンを自由に交換可能で、交換後はセーブデータに保存される。もちろん単なるコレクションではなくバトルで使えるなど、通常のメンバーと全く同じ扱いの仲間キャラになる。なかなか面白そうだ。
説明書には何匹かのポケモンも紹介されていた。どうやら序盤に出てくる連中のようだが、早い段階から炎や雷などの属性を連想させるキャラが多い。これも従来のRPGではあまり見なかったポイントである(だいたい属性を意識するのは中盤以降という印象だった)。
そして図鑑システム。1匹ごとに詳しい説明が表示されたり、生息地を確認できたり、鳴き声まで個別に設定されて自由に聞くことができる。これは面白いと思った。一段落したところでちょっと操作させてもらい、未入手のポケモンを生息地を確認して探し、ボールを投げて捕まえてみる。楽しい(このゲームではお金は貴重だからむやみに使うなと言われたが)。
ゲーム自体は数日でエンディングを迎えたと思う。私と同じくらいRPGには慣れていたのでさほど苦戦もしなかったようだ。シナリオクリア後は図鑑集めがメインとなり、私がプレイする機会が多くなった。
旅立ちのとき、オーキド博士から図鑑の完成を依頼されるが、これはプレイヤーに対しては究極の目的として提示された程度のことであり、シナリオ中においてはポケモンの収集は決して義務化はされない。図鑑に一定種類のポケモンを登録することでアイテムがもらえる場面があるが、いずれも必須アイテムではなく無視可能である。これは英断だったと思う。なんならボール系アイテムを全く使わなくてもクリアできてしまう(いあいぎりを使えないゼニガメを選ぶと不可だが)。
というわけで、ポケモン図鑑集めというのは、シナリオを一通り終えた後の次の目標として純粋に楽しめるようになっているのだ。まず、未入手のポケモンで野生で出てくるものをチェックして捕まえにいく。進化系は出現率がかなり低く設定されているようなので、直接捕獲のみならずレベルアップで進化も検討する。
そして「生息地不明」および空欄の箇所でも、明らかに進化系と思われるところは、まずは「石」系アイテムを試してみる。通信ケーブルを通らないと進化しないポケモンがいることは既にわかっているので(タマムシデパートのゲーム売り場で、通信交換でもらったゴーストが別のポケモンになったという話が聞ける)、石に反応しなければ一旦無視。
通信関連と言えば、二者択一あるいは三者択一のポイントもチェックしておく。また、マダツボミやサンドのように、一見するとありふれているように見えるが生息地不明のポケモンについてはバージョン限定である可能性を頭に入れる。こんなことを考えながら、図鑑を少しずつ埋めていった。まだ攻略本は無い。
後に周囲でもポケモンの購入者が現れると、とりあえず最初のポケモン(いわゆる御三家のこと)だけでも分けてもらう。つまりゲーム開始して通信交換ができるようになったら受け取って、また最初からやり直すのを繰り返してもらうのだ。その友達の分もちゃんと確保する(本プレイを開始したら戻してやる)のでWin-Winである。
そんな感じで、少しずつ図鑑を埋めていった。この過程はとても楽しく、今までのゲームでは味わったことが無いものだった。従来のRPGでは、レアアイテムを手に入れるためにすることといえば、ノーヒントでは偶然に期待するしかなく、答えを知ったあとでもひたすら回数をこなして確率に挑むしかなかった。つまり、プレイヤーの介入でどうこうするような要素がなかった。
しかし『ポケモン』ではゲーム内のヒントから類推するというのがメインであり、確率との戦いとなるような場面はない。せいぜいサファリゾーン(野生ポケモンの逃走を阻止できない)くらいだが、それにしても従来のゲームでレアドロップを狙う作業よりは遥かにハードルは低い。純粋に「コレクション・コンプリート」を楽しませてくれる、絶妙な設定だった。後にも先にも、初代『ポケモン』ほど収集要素を楽しめたゲームというのは(同シリーズ作品を含めても)皆無である。
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