公式ルールとポケモンスタジアム
1996年末の青版の発売、1997年春のアニメ版放送開始など、ポケモンシリーズの勢いは止まることを知らなかった。97年の夏はついに全国大会が開催され、そのためのルール(今で言う「97カップ」)が制定された。使うポケモンのレベルを50~55・合計155に制限したルールである。
しかし、この頃には周囲のポケモン熱もやや冷めていたような気がする。ルールにあまり魅力を感じない(せっかくLv100まで上げたのに!)とか、実際に会場まで赴いて参加することに対して高いハードルがあったことも理由だろう。それに新作(金銀)は一体どうなったんだという気持ちがある。一応、同年中には任天堂のイベントでプレイアブル出展されたようなのだが、続報もその頃からずっと止まっていた。
この年、各社から『ポケモン』の攻略本が大量に発売される。確認しているだけでも20冊以上である。中には既刊の完全版だったり、書き込み前提のシール付きノートのようなものもあるのだが、前年の3冊(遊びつくす本は赤と緑で同一換算)も含めると、同一タイトルの攻略本がここまで発行された例は後にも先にも無いのではなかろうか。それともキャラ別の本が出た『スト2』あたりには負けていたりするのだろうか。まあ詳しいことは専門家に任せる。漫画やカード・アニメ関連も含めると、この年には本当に膨大なポケモン関連書が発売されたはずである。
初期の攻略本はストーリー攻略がメインだが、この年に出た攻略本は既刊ではあまり扱われなかった「育成」に注目したものが多い。目指すところは公式ルールだったりフリーバトルだったり、はたまたゲーム内の「殿堂入り」だったりして方針がバラバラなのだが、今になって読み返してみると(当時読んだときの印象と比べて)意外としっかりしたことが書いてあったりする。
さて、『ポケモン』といえば過去のRPGに例を見ない複雑怪奇な育成システムで知られる。当時の攻略本のいくつかもその謎に挑んでいたが、核心には至れなかった。せいぜい「低レベルから育てる」「ドーピングは早期に行う」あたりであり、戦闘回数を稼いで、いわゆる努力値を稼ぐという発想にはなかなか行き着いていない模様である。開発中は容量不足に悩んでいたというインタビューが早期に公表されていたこともあり、そこまで複雑なシステムだと思っていなかったプレイヤー(攻略本編集者含め)も多かったと推測される。
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明けて1998年。ニンテンドウ64と連動する『ポケモンスタジアム』が発表される。3D化したグラフィックや、公式大会を再現したバトル、そしてゲームボーイ側のデータを整頓・管理する機能が売りであった。多少は興味があったが、この段階ではまだ買うつもりはなかった(だいたい『金銀』はいい加減どうなったんだよ!という気持ちも強かった)。
決め手になったのは、ゲーム内で条件を満たすことで「ピカチュウに波乗りを覚えさせられる」「GB版を倍速で遊べるようになる」といった隠し要素(クリア特典)を知ってからであった。同時に、『ポケモン』というゲームの可能性が広まった瞬間でもある。同じデータを別のゲームで使用することで、ソフト単独ではできなかったことでも出来るようになるというのは新鮮な驚きであった。
買うと決めたら、育成開始である。買う前から既に攻略をスタートできるというのが面白いところだ。改めて雑誌や攻略本をチェックすると、「ポケモンは戦闘の回数や内容によってレベルアップしたときの能力が変わる」という、衝撃の新情報が書かれていた。マジかよ、2年間ゲームをやって、攻略本もだいたいチェックしてたのに全く気づかなかったぞ。
後に知ることになるのだが、1997年中にはインターネットの個人サイトで成長システムが完全に解析されて公開されていた模様。それに比べると、98年中に公式から明かされた情報はまだまだ不完全で、例えば上限があることに触れていないのでどの能力を伸ばすかは選択式であるかのように書かれていたし、真に受けると規定レベルまで可能な限り多くの戦闘をする羽目になる。
とはいえ、98カップのレベル30までなら限界まで戦闘を重ねることはそれほど非現実的ではない。たしかこのとき育てたのはピカチュウと、ダグトリオ・ラプラスだった気がする。97カップのほうはどう攻略したのか覚えていない。もしかしたら翌年以降だったかも知れないし、とっくにインターネットで成長システムを把握したあとだったかも知れない。
ポケモンスタジアムの攻略を通して制限レベルでの対戦の面白さに目覚めるわけだが、周囲にはそこまでやりこみに付き合ってくれる人がいなくなっていた。『ポケモン』そのものについては新しく手を出す人がいたりしたが、通信対戦をやり込むというのは相当に高いハードルであるというのを改めて実感したのがこの頃である。
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