最終話 奇妙な同居人
もう、祟られようが殺されようが知るか!
どうせこのままじゃノイローゼになって破滅だ!
まともな人生を送れやしない!
だったらもう、この生首が女子中学生の美少女の生首だって部分を有効利用させて貰うわ!
首だけあれば、キスはできるもんな!
それだけで十分興奮できるわ!
身体が無いのは考えないようにすればスルーできるし!
この少女の幽霊に苦しめられた怒りが、俺を自暴自棄にさせ。
同時に俺の内に秘めたどす黒い欲望を、この生首少女にぶつけることを可能にさせた。
俺にキスをされた少女は口をギュッと閉じた。
腕も足も無いから、暴れるのができないのか。
……だったら男の前に出て来るな!
心で吐き捨て、唇を舐めようと舌を出したら
少女の口が開いた。
俺はすかさず舌を滑り込ませ……
同時に、噛まれる。
痛ッ!
離れようとしたら、少女は舌を噛むのを止めてくれて。
俺は離れることに成功する。
だけど……
顔を離した少女は、目にいっぱい涙を溜めて俺を睨んでいたんだ。
……え?
たじろいでしまう。
そこに
「死ね変態! 最低!」
彼女はそう大きな声で俺を罵倒する。
……思えば、この子から初めて聞くナマの声。
そして
……スーッっと、消えて行ったんだ。
消えた……
予感があった。
これからは、生首少女は現れない。
助かった……
破れかぶれだけど、勇気を出して道を切り開くことが出来たんだ……
そして数日過ぎた。
これまでの恐怖に彩られた日々は、もう無い。
平穏そのものだ。
日常が戻って来た。
……だけど。
最後に、あの子に睨まれたことが気になって来たんだ。
思えばさ……
あの子は俺を恨めしそうに見に来るだけで、殺そうとはして来なかったよな……
なのに俺は……
事情を訊いてやることもせず、怯えるばかりで……
最終的にプッツンして、無理矢理キスする暴挙を……
彼女、泣いてた……
もし、あれが彼女のファーストキスだったらあまりに酷い。
昔、クソ芸人が売れないアイドルの子に無理矢理キスをするブイを見たことがある。
そのとき、そのアイドルの子は泣いててさ……
酷過ぎる、って思って。
その番組は二度と見なくなったんだよな。
俺はなんて、酷いことをしたんだろうか……?
今、俺は。
彼女に謝りたいって思っていた。
これまでは目の前に現れないでくれって思っていたのに。
今はできることなら出て来て欲しい。
「悪かったよ……」
そう思っている。
そのときだ。
「……私も、ごめんなさい」
声がした。
リビングでソファに座り、テレビを見ているときだった。
リモコンを取ろうと、ローテーブルに放置していたそれに手を伸ばしたとき。
そこに居たんだ。
俺の目が釘付けになる。
彼女は
「……やり過ぎました……すみません」
そう、目を伏せた。
俺は
「……許してくれるって言うのか……? 君に酷いことをしたのに……」
「その後、おじさんは苦しんでくれたよね……」
正面から見つめ合う。
「だから……私も自分のことばかり言ってちゃダメだよね」
そう言って。
彼女は微笑んでくれた。
そして
「ただいま」
俺はちょっと前まで一人暮らしだったけど。
今は違う。
同居人が居るからだ。
「おかえり! 今日もお疲れ様!」
満面の笑みで迎えてくれる。
とても可愛い、首だけの少女が。
彼女は、玄関マットの上に鎮座して。
俺を見上げて今日の俺の労働を労ってくれた。
<了>
エロDVDと生首と XX @yamakawauminosuke
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