(4)
「何で、毎度、こうなる?」
打撃技だけの寸止めって条件での練習は、俺のボロ負けだった。
こっちの攻撃は、あっさり払われ、真佐木の攻撃は「気」を込めてない上に、俺と真佐木の体格差を考えても、当ててればマズい事になるような場所の手前で止まっていた。
「あのさ……戦闘訓練で学年1位と2位の差って……」
俺達の練習を見ていた牧田が、そう呟く。
「いや、こいつが勝ってる点も有る」
真佐木が、そう言った時……。
空気が微妙に変る。
おい……待て……まさか……。
轟ッ‼
俺と真佐木の「気」がぶつかる。
そして、真佐木の方が後方に軽く吹き飛ばされたように……だが、ギリギリでバランスを保っているように見える。
「おい、何しやがるッ⁉」
「見ての通りだ。『気』は、こいつの方が上だ。体感では1.5倍以上だが2倍よりは下って所か……」
「じゃあ、『気』を使った戦いなら緒方の方が勝つのか?」
「そこが問題だ。こいつは強い『気』を上手く押えられていない」
「えっ?」
「見えるんだ。こいつの強い『気』のせいで、こいつの一瞬後の動きが……」
そうか……あの時だ……。
実は羅刹だった水原達が、真佐木と戦った時……あの時、あいつらの強い「気」のせいで、次の動きが見えてしまった。
でも、俺の「気」は、あの時の奴らよりは弱い筈……でも……。
「判ってるだろ? 私は、身体能力もそれ程高い訳じゃない。『気』の強さもな……この学年の中では良くて『中の上』か『上の下』だろう」
「い……言われてみりゃ……。でも、何で? 何で、お前は戦闘訓練では学年1位なんだ?」
牧田が真佐木に、そう訊いた。
「自分の特性に合った戦い方を見付けた。それだけだ」
「へ?」
「『気』を感知する能力か……。それをカウンター狙いの戦い方に活用した……」
「お前にも何か手は有る筈だ。その強い『気』を上手く活用する戦い方が……でも……」
認めるしか無い。
俺は、所詮は秀才止まり……。
「お前の戦い方は教本通り、教官達から教えられた通り過ぎる。お前は、自分に合った戦い方を、まだ、見付けていない」
そして、こいつは天才だ。
まだ、訓練中の筈なのに、自分に合った戦い方を自分で編み出している。そんな真似は、普通は出来ない。そして、それが普通でない事に、こいつ自身が気付いていない。
天才と秀才は、普通の人間には見分けが付かない……でも……秀才にしか成れない奴は、天才に対して……。
ひょっとしたら……これから、とんだ苦労が始まるのかも知れない……。
俺の中の……自分が、どれだけ努力しても秀才止まりである絶望と、真佐木が素で天才である事……それも誇るでもなく、あくまで、それを「自分の当り前の状態」と認識している事……に対する嫉妬とに、どう折り合いを付けていけばいいのか……。
多分、天才が
俺が、こいつの言う「俺に合った戦い方」を、いつまで経っても見付けられなかったなら……こいつは、キョトンとした
「何で?」
って……。
まるで……空を悠々と飛ぶ鳥にとって、地を這って生きている人間が、何故、自分を憧れの目で眺めているか判らないように……。そして、その鳥は、不思議そうに、こう言い放つんだ……。「
羅刹狩り @HasumiChouji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。羅刹狩りの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます