概要
本当に大切にしたいものを持ち続けていたい人に送ります。
父の人生を一変させた景色は、どのようなものだったのだろう。父は一枚の絵を残して、この世を去った。願っているだけでは何も手に入れることはできない。社会に対して行き詰まりを感じていた楓月(かづき)は、突然目の前に現れた咲良に促されて景色を探すことを決意する。しかし旅は思いがけない出来事や困難に満ちていた。父は何故、亡くなったのか。咲良とは一体、何者なのか。母の性格が変わってしまった理由とは何だったのか。楓月は家族の過去や咲良の苦悩を知り、行く先々で出会う人たちの優しさに触れることで変わっていく。母との確執や理不尽な社会への憤り、流されやすい世間の人たちからの圧力や絵の獲得を目論む者たちとの争い......。行く先は希望か絶望の二つしかない。はたして楓月と咲良は景色の場所に辿り着くことができるの
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!現代社会を生きるあなたへ向けたメッセージ
序盤から島国ゆえに共同体社会となった日本の同調•共感の部分に対する疑心や不満、鬱屈した思いが鮮やかに表現された群像劇です。
こう書くと暗い印象を受けますが、決してそんなことはありません。
ミステリージャンルならではの意味深な台詞回しや詳細な情景描写、複雑な心理描写など読みどころはたくさんあります。
多角的よりは主観的に、自分を取り巻く状況への思いであったり人のエゴであったり、或いは不完全さが語られていくのが興味深く感じられました。
そこまで難しく考えなくても、単純に絵をめぐる話、と捉えて触れてみるのもいいと思います。
キャッチコピーにもありますが、これは社会への問題提起をしつつも作者の繊細…続きを読む