何度も繰り返し味わいたくなる、楽しさいっぱいの料理(?)物語

 楽しすぎて、何度もリピートで読み返したくなるような作品でした。

 この物語は、主人公である料理人の晴仁青年が、一個の料理を完成させる姿を描いたものです。
 そして、「料理に使うそれぞれの食材」についての思い出を反芻していく。

 この一つ一つのエピソードが、とにかくもう面白い。人参、ゴボウ、こんにゃく。
 それらのエピソードが、いわゆる「心温まるもの」とかではなく、「そこ、思い出ってそれなの!?」とツッコミを入れたくなる、「実に珍妙なもの」揃い。
 
なんといっても、最初の「登場人物一覧」に出てくるのは晴仁以外は全部食材なので、「これ、普通の小説じゃないな……!?」と序盤で予感します。
 
 一回読んで「こういう風に締めるのか」と納得した後、リピートで二回更に読みました。それだけもう、エピソードの数々が愛おしい。何度も何度も読みたくなります。
 
 特に、過去に晴仁が発した「ある質問」って、どう見ても「某ジ〇リ」のアレじゃないですか、とツッコミを入れたくなりました。オリジナルの映画の中で「それ」を発した奴はその後に絡むのかと思わせつつフェードアウトしたことで有名ですが、晴仁は主人公なのでセーフ!!

 とにかくじっくり味わって欲しい、とても楽しい作品です。