My lover is Satan Claus!

 濃密な愛を交わした次の朝。

 美香は射し込む朝陽に目を覚ました。傍らではループレヒトが穏やかな寝息を立てている。

 目を閉じていると、普段は茶目っ気のある表情に隠されている整った顔立ちがはっきりするようだ。


――夢じゃなかった。私、この人の恋人になったんだ。


 ワインの酔いもすっかり醒め、改めて幸せを実感する。


――そうだ。夕べは顔も洗わずに寝ちゃったから、今のうちに化粧をしておかなくちゃ。


 こんなに美しい彼に、寝起きの顔などとても見せられない。

 美香は慌ててベッドを抜け出すと、服を抱えてバスルームに向かった。

 

 シャワーを浴びて身なりを整え、軽く化粧を終わらせると、ふと脱衣場のすみにある洗濯機が目についた。適当に汚れ物を放り込んであると見え、ふたがあきっぱなしになっている。


――彼にもこんなところがあるなんて……やっぱり生身の男のひとね。


 いつも完璧な紳士らしい顔しか見せないループレヒトの、人間らしい面が見えたようで、少しほほえましい。


 無作法だとは思いつつ、つい中をちらっと見てしまった美香は驚愕に凍り付いた。


――あのぱんつ……あの蛍光ピンクの象さんぱんつは……まさか!?


 今の今まで夢だと思い込んでいた雪山での出来事が脳裏によみがえる。

 命の恩人が頭からすっぽりかぶっていたものは、まさしく美香の目の前にある、黒地に蛍光ピンクの象がプリントされた男性用のぱんつである。


――夢だと思っていたのに……


 あまりのショックに崩れ落ちそうになった美香は、不意に背後から聞こえた声に思わず飛び上がった。


「おはよう、目が覚めたかい? 今日は雪が降るみたいだから送っていくよ。また吹雪の中で道に迷ったら困るからね」


 どこか面白がっているかのような低い声。

 振り返ると、見覚えのある黒いトレンチコートを抱えた彼が、うっそりと微笑んでいた。

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白銀世界のサタンクロース 歌川ピロシキ @PiroshikiUtagawa

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