第11話 エピローグ
あれから、半年が経った。樹は大ちゃんと一緒に踏切の遮断機が上がるのを待っていた。
カーンカーンカーンカーン。
「今日、晩ごはん何がいい?」
ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン。
「そうだなぁ、チキンカレー。」
カーンカーンカーンカン。
遮断機が上がり、さっきまで隣に並んでいた原チャリがスタートダッシュを決め、一番に踏切を渡りきった。二人は歩幅を合わせ、一緒に踏切を渡りきった。
踏切を渡りきった先には昔からある小さな商店街がある。十七時だというのに、もう空は薄暗く、商店街の昭和レトロ感漂う街灯に明かりが灯る。肉屋のコロッケを揚げる香りが漂ってくる。
「ねぇ、コロッケ買っていこうよ。」
「コロッケカレーか、いいね。」
「じゃあ、コロッケ二個だね。」
「そうだな。
お母さん、つわりが辛くて揚げ物はいいって言ってたしな。」
「たぶん、もうカレー以外のなんか作ってるよ。」
「じゃあ、土下座してカレーも作ってもらうか?」
「あれをイジる。さすがにダメでしょ。」
「実は花火大会のとき、お父さんも土下座したんだ。」
「知ってるよ。山下先生から聞いた。」
「そっか、あいつ飲み代奢ったのに喋ったのか。そうだ、いっちゃん。今年の夏は三人で見ような、花火。」
「違うよ。四人だよ。」
漆黒の夜空に太陽の光を浴びた満月が
「いっちゃん、月、きれいだな。」
「そうだね、お父さん。」
了
太陽の翳と月の裡(たいようのかげとつきのうら) @richigisyanokodakusan
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