懐妊と改任

 何人かの男女が・・・苦しみ、足掻く。

 そんな・・・「夢」


 よく、変な夢を見るのです。

 其れは、この子を孕み生むことを決意したその時から。

 

 私の想い人は現世に存在されませぬ。他に想う者など居はしない。

 さすれば、コレは忌み子に相違なく、鬼、畜生の子など願い下げじゃ。


 位高きお方にご相談するも、その未来は未知数であり不確定要素。

「人間万事塞翁が馬」とも捉えれど、視せる夢は地獄絵図。


 ただ、幾ばくかの・・・私の願いはこの子の安泰。地獄の中にも安らぎすら、稀有に感じるその不可思議な夢々は、この子が視ているモノだろう。


 過去か、未来か。はたまた、別のモノの人生か・・・・・・



 周囲に群がる、数多なる物の怪の気配と影響。これは脅威を感じる対処なのか、賛美を称えるものなのか。

 其れすらも、この子は真実を感じていることでしょう。


 我が家系の運命に、私は独断この血を絶つつもりでおった。

 同じ人生を歩ませることなど、誰が出来よう。

 過去に縛られ、過去に囚われ。過去という因果の真実を知れば知る程、我が身を呪う。我が血を汚う。


 知らぬが仏とは、これまた説法。

 されど、知らねば馬鹿を見る。この世の全ては知して始まり、この世の未来は己でどう思考するか。それが唯一、現世に継続し残された人間という存在の善き部分であろう。

 知らぬで通るその世界。それは畜生以下の界での話であり、畜生にまで落ちる程、阿呆な悪業はせぬし出来ぬ。


 私は、覚悟を決めたのじゃ。

 血筋、運命、過去、未来・・・・・・

 知っても尚、拱き泣き寝入るつもりは無い。

 物の怪でも無ければ、畜生でも無い。

 鬼でも無ければ、悪霊でも無い。

 人外でも無ければ、外道でも無い。


 不確定要素であれば、自ら確定させようぞ。

 この命を懸けてでも。

 寂しい思いもさせはせぬ。それで私が地獄へ行こうが。


 想い人との夢も見た。この子はその時、授かり偲子ぞ。

 間違いは、ありませぬ・・・・・・

 もし、そうだとしても・・・・・・



~懐妊と改任~    了





『心霊カンパニア』本編⇩


https://kakuyomu.jp/works/16818093073381669406


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『心霊カンパニア』外伝 白銀比(シルヴァ・レイシオン) @silvaration

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